昼休み、あたしは麗華たちとの接触を避けるために、旧校舎の外のトイレに来ていた。

個室に入って便器に座る。

ハーっと息をつく。

あたしが安らげる場所はトイレしかない。

あたしはそんな身分に成り下がっていた。






しかし


そもそもその考えが大きな間違いだった。




「奈々美〜?ほんとにここのトイレ?」

「うん。…多分。最近ぶーちゃんがこのトイレ使ってるんだよ。」

「そう?」



ドクンッと心臓が跳ねる。

血が身体中をものすごい速さで駆け巡る。

麗華たちに見つかってしまった。

あたしは、個室に鍵を閉めて息を潜めた。


お願い———!!
出てって!
あたしのことを見つけないで!!


そんな風にただ願っているだけなんて、あたしは大馬鹿だった。


「あれ〜?おっかしいな〜!ここの個室だけ鍵がかかってるな〜?」


麗華が笑いを含んだ声で言う。


ハッとした。

バカバカバカバカ!

あたしのバカ!

鍵なんかかけたら、「私はここにいます」って言っているようなものじゃない!


「もしも〜し!誰かいますか〜?」


彩綾の声が響く。


「いないんなら、掃除しちゃいますよ〜?」


声が喉に張り付いたようになり、出ない。

あたしは便器の上で震えていた。


「じゃあ、お掃除始めようか!」


奈々美の声とともに上から大量の水が降ってくる。


「つめ…た!」

「あれ〜?声が聞こえた気がするな?きのせいかな〜?」


上から、今度は汚く、臭い掃除用の埃だらけのモップが降りてくる。

モップが頭に擦り付けられ、漂う異臭に耐えられなかった。


———かちゃっ。


あたしは我慢できなくなり、思わずドアを開けた。


「あれ〜?やっぱいたんじゃん、ぶーちゃん!誰もいないかと思って掃除しちゃったね!」

「ね〜!」


積極的にあたしをいじめるようになった奈々美が聖理奈と顔を見合わせてニヤリと笑う。