「遅いなぁ、ぶーちゃん!」



彩綾がぶーちゃんを蹴る。



「う…あ…」



愛香はよろよろと立ち上がって、くにゃくにゃと踊り出す。



「ぷっ…!」



思わず吹き出してしまった。

踊りかた、辿々しすぎるでしょ。

まさに「くにゃくにゃ」だわ…。


ポケットからスマホを取り出してかざす。



「ぶーちゃん、そのまま踊って?」

「え…?」



ぶーちゃんが止まる。

は? 何やってんの?



「さっさと踊れよノロマ!」



あたしは、ぶーちゃんを蹴った。

今日の昼に強く蹴ったところを、わざと。


アザになっているところを蹴られると痛いでしょ?

それに、あたしは、空手の弍段を持っている。

蹴ったり殴ったりすることには、自信があるんだ。



「う…う…」



ぶーちゃんは、痛みに顔を歪めながら踊る。

足取りはフラフラしている。

今日、みんなでぶーちゃんを蹴った。

だから、痛いんだよね。

知ってるよ。

面白いね。



あたしは、笑いながら動画を撮り続ける。

面白いよ、ぶーちゃん。

見ていて、すごく楽しい。



その時。

邪魔が入ったんだ。