The previous night of the world revolution7~P.D.~

…とはいえ。

「この方法も、あの二人に対して有効かどうかはまだ分かりません」

先程も言った通り、現状俺達が何をしても、エペルとミミニアにとっては「媚びを売っている」としか思われてないのだから。

せめて、食事くらいは共にする仲にならないと。

相手の心に触れるのも難しいですよ。

女を落とすのは得意なんですが、今回はそれが目的じゃありませんからね。

だから、もっと確実で、堅実な方法を取るべきだと思うのだが…。

「側近二人が落とせないなら、いっそその二人は諦めませんか?」

と、ルーチェスが言った。

さすがはルーチェス。今俺も、あなたと同じことを考えてましたよ。

「諦めるって…。諦めたら駄目だろ。エペルとミミニアは、『ブルーローズ・ユニオン』の権力者なんだろ?あいつらを懐柔しないことには…」

それはまぁ、そうなんですけど。

そう出来たら一番手っ取り早いというだけで、他に方法がない訳ではない。

「あれだけ頑なな相手に、下手に媚びを売っても、逆に顰蹙を買うだけでしょう」

「…そうだな」

「ならいっそ、エペルとミミニアにすり寄るのはやめましょう。少なくとも、しばらくの間は」

俺達はまだ『ブルーローズ・ユニオン』に転職したばかり。

一朝一夕でエペルとミミニアの信用を得るのは難しいだろう。

ならば、いっそ「今」エペルとミミニアの信用を得るのは諦める。

二人には勝手に警戒させておいて、俺達は素知らぬ振りをして…そして…。

「そして、もっと『話の分かる』相手と仲良くなった方が良いと思うんです」

エペルやミミニアと違って、まともに俺達の話を聞いてくれそうな相手とな。

「話の分かる相手って…誰だ?」

それはルルシー、決まってるじゃないですか。

「セルテリシアですよ」

「…!」

俺達を『ブルーローズ・ユニオン』に勧誘し、連れてきた張本人。

そして、我らがアイズレンシアと覇を競い、『青薔薇連合会』首領の座を目論む『ブルーローズ・ユニオン』の代表。

セルテリシア・リバニー。あの小娘。

エペルとミミニアは無理でも、あの女なら多少話が分かるはずだ。

「あの女を先に籠絡してしまいましょう」

「…出来るのか?」

少なくとも、側近二人よりは難易度低そうじゃないか?

「それに…いくらセルテリシアの信用を得ても、実質支配権を持ってる側近二人に信用されてないんじゃ意味が…」

「勿論です。でも、お飾りだとしても、セルテリシアは腐っても『ブルーローズ・ユニオン』の代表です。ある程度の権力はあります」

実際セルテリシアは、独断で俺達のもとにやって来て『ブルーローズ・ユニオン』に勧誘した。

あれは、側近二人に相談せずに決行したことだと言うじゃないか。

つまり、それくらいのことなら、セルテリシアの独断で決められるのだ。

権力の欠片も持ち合わせていない、全くお飾りのリーダーって訳じゃない。

なら、セルテリシアを味方につけておくメリットは充分ある。

「それに、組織のリーダーと仲良くしておくのは悪くないですよ。何かミスをしても、お目溢しをもらえるかもしれませんし」

「それはそうだが…でも、上手く行くのか…?」

「上手く行かせるんですよ。さっき言った方法でね。今こそ、俺の腕の見せ所…」

と、俺が言いかけたそのとき。

「ちょっとお待ち下さい」

すちゃっ、とルーチェスが片手を上げてそう言った。

…ん?
「ルーチェス。何か反対意見が?」

「いえ、反対意見はありません。全面的にルレイア師匠に同意します」

それは良かった。

「では、何ですか?」

「セルテリシア・リバニーを懐柔する、その大切なお役目…不肖このルーチェスめにお任せ頂けませんか?」

この申し出には、さしもの俺も驚いた。

ルルシーも、目が点になっている。

ほう…?

「ルレイア師匠の薫陶を受けた身として、必ずやり遂げてみせます」

成程。その心意気…嫌いじゃない。

「簡単な仕事ではありませんよ。それに、失敗したら取り返しが付きません」

「重々承知の上です」

「…よし、分かりました」

俺の可愛い弟子が、ここまで覚悟を決めているのだ。

師である俺が信じなくてどうする。

「ではルーチェス、セルテリシアのことはあなたに任せます」

「ありがとうございます!」

「お、おいおい…良いのか?」

ルルシーは、心配そうな顔でそう言った。

良いに決まってますよ。

「ルルシー、あなたルーチェスのことが信用ならないと?」

「いや、そうは言ってない。でも…危険な仕事だろう?」

「別に命までは取られやしませんよ」

「…それはそうだが…」

…それに。

「ルーチェスなら上手くやってくれるはずです。俺はそう信じてますから」

弟子のことが信じられないなら、任せたりなんかしませんよ。

ルーチェスなら大丈夫だと確信しているから、この大事な任務を任せられるのだ。

「…分かったよ。ルレイアが信じると言うなら、俺も信じる」

ルルシーも決意を固めてくれたようだ。

そう来なくては。

「ただ、もし一人じゃ危ないと思ったら、すぐ言うんだぞ。絶対一人で抱え込むな。分かったな?」

と、念を押すことも忘れないルルシーである。

仕方ないですね。ルルシーは心配性ですから。

「分かりました。そうしますよ」

ルーチェスも苦笑いで頷いた。

…よし、これで話は決まりましたね。

「…じゃあ景気付けに一発、ルーチェスからどうぞ」

俺は、ルーチェスにマイクを手渡した。

トップバッターはあなたに譲りますよ。

「分かりました。では僕がお気に入りの、『frontier』の3枚目のアルバムから書き下ろし曲を一曲」

「…お前ら、そんな呑気で本当に大丈夫か…?」

というルルシーの呟きは…。

…やっぱり、聞こえなかったことにした。
――――――…さて、自ら大見得を切って大役を賜ったからには。

期待に応えないといけませんね。

僕はルレイア師匠ほど、優れた華麗な人心掌握術を身に着けている訳ではない。

しかし、これでもルレイア師匠のもとについて、彼の薫陶を受けた身。

精一杯務めさせて頂きます。

その為には、まず…。






「ねぇセカイさん、相談があるんですけど」

「ん?何だい、君が私に相談とは珍しいな、弟君よ」

いえ、ちょっとセカイをんのお知恵を拝借しようかと思いまして。

「何でも聞くと良い。セカイお姉ちゃんがばっちり解決してあげよう!」

それは心強いですね。

では、早速。

「同僚の女性を口説こうと思うんですけど、どうやったら上手く行きますかね?」

「ふむふむ、成程ね!それは難題だねー」

でしょう?

だから、セカイさんに相談したんですよ。

困ったときのセカイさん頼み、ってね。


今回僕が懐柔し、籠絡するターゲットは、『ブルーローズ・ユニオン』の代表であるセルテリシア・リバニー。

そしてセルテリシアは、女性である。

女性の気持ちを知るには、女性に尋ねるのが一番だろう?

という訳で、セカイさんに聞いてみた。

「しかし珍しいね。ルーチェス君が女の子に興味を持つなんて。男の子の方が好きなんだと思ってた」

それは偏見というものですよ。

「確かに僕は男も大好きですけど、こうしてセカイさんと結婚している以上、女性も好きですよ」

「そうだったね。ルーチェス君はバイなんだった」

えぇ、そうです。誤解しないでくださいね。

「何々?その子可愛いの?おっぱい大きい?」

好奇心丸出しの顔で尋ねるセカイさん。

おっぱいの大きさはそんなに重要ですか?

…まぁ、重要だな。大切なポイントですよ。

「おっぱいはそんなに。ぺたん胸です」

「そっか!ルーチェス君ちっぱい派だもんね」

「はい」

大抵の素人男は、おっぱいは大きいほど良い!と信じているが。

大きければ良いってものじゃないんですよね。

ルレイア師匠が言ってましたよ。おっぱいで重要なのは大きさではなく、味と感度だと。

僕もそう思います。

人生の教訓として、墓場まで持っていきたい。

さて、それはともかく。

「年上の女の子?」

なおも、わくわくと尋ねてくるセカイさんである。

年齢も大事ですよね。

熟女はあまり「美味しくない」って、ルレイア師匠も言ってましたし。

「いえ、年下です」

セルテリシアはまだ小娘ですから。

すると、セカイさんがその返事に反応した。

「ほう、年下!ルーチェス君、君さては…隠れロリだな!?」

いえ、別に隠れてはいないんですが。

堂々とロリです。

「基本的には年上の方が好きなんですけど、今回の相手は偶然年下なんです」

「そっかー。まぁたまにはロリっ子をぺろっと、お持ち帰りしたくなるときもあるよねー」

「そういうことですね」

たまにはこう、趣向を変えてですね。

普段は食べないものをふとした機会に食べると、意外と美味しく感じる現象。ありますよね?

それです。

「そっかそっかー。同僚の、年下の女の子か〜…。ルーチェス君も隅に置けないのう、このこの〜」

「ちょ、突っつかないでください」

セカイさんはにやにや笑いながら、僕の脇をツンツン指で突いてきた。

別に、好きでセルテリシアに近づくんじゃありませんよ。 

側近二人があまりに頑なだから、まずは主人であるセルテリシアから懐柔しようと思ってるだけです。

僕達の『ブルーローズ・ユニオン』での立場を、確固たるものにする為に。

現状、居心地が悪いにもほどがありますからね。
「それで、セカイさん。その年下の女性を…」

「ロリっ子だな?可愛いの?」

セルテリシアが可愛いのかって?

そうだな…。

「可愛さのレベルで言えば、セカイさんの8分の1くらいですかね?」

「何だよそれは〜。嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

何度も言いますけど、僕は別に、セルテリシアが好きで口説こうとしてるんじゃないですからね。

どうせ口説くなら、女性じゃなくて男性が良い。

って、また脱線してるじゃないですか。

「どうしたら楽に口説けると思いますか?」

「ルーチェス君は格好良いんだから、君に『好きです』って言われたら、大抵の女の子はそれだけで落ちると思うよ」

そうですか?それはありがとうございます。

でも、いくらなんでも買い被り過ぎでは?

そんなに単純ではないと思いますよ。そう言ってくれるのは嬉しいですけど。

「残念ながら、それだけでは落ちそうにないんです。身持ちが固いようで」

男の気は全くなさそうだったもんな。セルテリシアは。

免疫もなさそう。

立場上、これまでも彼女にすり寄ってきた男…もしかしたら女も…は、たくさんいたと思うけど。

セルテリシアには未だに、決まった相手はいない。

つまり、近寄ってきた男や女は、全員門前払いを食らってきた訳だ。
 
そう簡単に籠絡してはくれまい。

あるいは、そうやってセルテリシアに近寄ろうとする不届き者は。

あの頭の固そうな側近二人に、ことごとく返り討ちにされてきたのかもしれないな。

つまり僕も、不用意にセルテリシアに近寄ろうとすれば。

側近二人に、拳銃で追い払われる可能性がある訳ですね。

うーん、手厳しい。

僕はこんなにも無害なんですけどね。

「そうかー…。うーん…。じゃあ、プレゼントを用意してあげたらどう?」

と、提案するセカイさん。

プレゼント?

「プレゼントですか…」

「うん。男の子からプレゼントをもらって、喜ばない女の子はそうそういないよ」

ルルシーさんが口にしていた、プレゼント作戦ですね。

エペルとミミニアには効きそうにないけど、セルテリシアはどうだろう。

「ルーチェス君より年下の女の子なんでしょ?だったら余計ウブな子だろうし。プレゼントを渡してあげたらイチコロだよ」

「ふむ…。ウブなのかは分かりませんが、プレゼントは良い案かもしれません」

「でしょー!」

セカイさんに相談して良かったですよ。

プレゼント…プレゼントねぇ。

何が良いでしょうね。プレゼント。

「何をあげるの?指輪とか?ネックレスとか?」

「いきなりそれは重くないですか?」

「えー、そう?私ルーチェス君と付き合ってた頃、いきなりルーチェス君に指輪もらったよ?」

そういえばそうでしたね。

あれ?僕ってもしかして…重い男子だった?

「もっと段階を踏むべきでした。済みません。一目惚れだったので早く結婚したくて」

「良いってことよ、ルーチェス君ったら。相手が喜んでるなら、プレゼントなんて何でも良いんだよ」

そうですか。ありがとうございます。

相手が喜ぶなら…か。

セルテリシアは何をもらったら喜ぶのだろう?

欲しいものがあれば、大抵のものは何でも手に入るであろう彼女が。

今更、他人に何をもらって喜ぶのだろうか?

「何あげるの?お花とか?香水とか?ブランドバッグ…は重いかな」

「ふむ…。まぁ考えておきます」

「うん、頑張れ!応援してる!」

「ありがとうございます」

セカイさんに応援してもらったからには、何としても成功させなければいけませんね。
…と、意気込んだのは良いとして。

冷静に考えてみたら、僕は別にセルテリシアを口説く必要はないのだ。

口説くっていうのはあくまで比喩だ。

別に僕に惚れさせなくても良い。ようは、セルテリシアの信用を得られれば、それで目的は達成されるのだ。

恋人や愛人になる必要はない。友達になれば良いのだ。

この人は信用出来る、心を許せる…と思ってもらえればそれで良い。

じゃあ、その為に何をするのか?

ルレイア師匠の教え。そして、セカイさんのアドバイス。

色々と考えて、僕は計画を練った。

そして。

いよいよ、その計画を実行する日がやって来た。







セルテリシアに近づくには、まずあの厄介な側近二人、エペルとミミニアの追及を躱す必要がある。

僕達のことを全く信用していないあの二人は、僕達がセルテリシアに近づくことを許してはくれないはずだ。

従ってセルテリシアに近づくには、エペルとミミニア両名が不在のときでなければならない。

不用意に近づこうものなら、「セルテリシア様に何の用だ?」と余計疑われることになりかねない。

慎重に動くべきでしょう。

そして、計画実行日である今日は、セルテリシアに近づく絶好のチャンスだ。

というのも、今日の午後から数時間、セルテリシアの側近二人は。

任務で、『ブルーローズ・ユニオン』本部からいなくなるらしいのだ。

このチャンスを逃す手はない。

鬼の居ぬ間に洗濯、ならぬ。

鬼の居ぬ間にナンパ、ですね。

「…よし、今なら…」

僕は『ブルーローズ・ユニオン』本部の窓に貼り付いて、エペルとミミニアが出ていくところを確認し。

早速、セルテリシアのいる、本部最上階の部屋に向かった。

勿論、今日の為に用意した「貢ぎ物」も持参して、だ。

あとは、用意した言葉を頭の中で再度反芻する。

セルテリシアがどのような反応をするかは分からないが…。

とにかく、まずは一歩を踏み出してみなければ分からない。

当たって砕けろの精神で行きましょう。

…いや、砕けるのはちょっと遠慮したいですけどね。

貢ぎ物を片手に、エレベーターに乗り込む。

真っ直ぐ最上階に向かい、エレベーターが開き。

一歩を踏み出した途端、僕は最初の「洗礼」を受けた。
 
「止まれ」

「うわっ、びっくりした」

エレベーターの扉が開くなり、僕を待っていたのはマシンガンの銃口であった。

それで僕を蜂の巣にするつもりですか。

それとも『ブルーローズ・ユニオン』には、味方にマシンガンを向けるのが正しい挨拶である、というルールでもあるのか。

「…何ですか?これは」

「このフロアは、セルテリシア様が許可された者しか入ることは許されない」

マシンガンを構えた強面の構成員が、そう言った。
あー、成程そういうことですか…。

本当に、随分と身持ちが固いんですね。

一応幹部の身分なのに、アポ無しで首領に会うことは出来ないと。

仮に味方相手に、マシンガンなんか向けないでくださいよ。

危ないじゃないですか。

まぁ、撃たれたら避けますけど。

「ここに何の用だ?」

何の用だと言われましても…。

「セルテリシアさんに用がありまして」

「用とは何だ」

「ちょっと一緒にお茶でもしようかと…」

「セルテリシア様にそのような予定はない」

アポ無しだと、会いに来るのも駄目なんですか?

それはまた随分…「お高く留まった」リーダー様ですね。

アシュトーリアさんなんて、アポ無しで突然訪ねても、快く歓迎してくれましたけどね。

上に立つ者として、懐の広さの違いというものを実感しますね。

「だってアポイントを取ろうとしても、どうせ駄目だと断られるでしょう?」

何の為に、エペルとミミニアのいないときを狙って来たと思ってるのだ。

僕がセルテリシアに近寄ろうとしているのを知れば、あの二人のこと、いきり立って拒絶するに決まっている。

しかし。

「現在はエペル様とミミニア様も外出中だ。お二人が不在の間に、何人たりともセルテリシア様に会わせることは出来ない」

本当にお高く留まってますね。

それとも臆病なのか?

側近がいないと、客人に会うことすらしないとは。

客人と言うか、同じ組織の仲間じゃないか。

「ほんの少しの時間で良いですから。折角来たんだから入れてくださいよ。別に忙しくて手が離せない訳ではないんでしょう?」

駄目元だけど、ゴネるだけゴネてみる。

ここまで来て門前払い食らって、「はいそうですか」でむざむざ帰れるか。

食い下がらせてもらいますよ。

どうせ、失うものは何もありませんからね。
しかし。

「駄目だ。不在中は誰も通すなと、エペル様とミミニア様の厳命だ」 

頑固な強面構成員は、断固として譲らなかった。

頭が固い、頭が。

もう少し柔軟に考えることが出来ませんかね。

大体、「エペル様とミミニア様の厳命」って何ですか。

あなたの主人はその二人ではなく、この後ろの部屋にいるセルテリシア・リバニーなのでは?

仕える相手を間違ってませんか?

「ちょっと落ち着いて考えてみてくださいよ。僕は『ブルーローズ・ユニオン』の幹部であって、幹部としてリーダーに謁見したいと…」

「いかなる理由があろうとも、誰も通すなとの厳命だ」

馬鹿の一つ覚えみたいに同じことを繰り返して、強面構成員はマシンガンを構え直した。

これが目に入らぬか、と言わんばかり。

いや、目には入ってますけど…。

味方相手に、しかも僕は腐っても幹部だというのに。

よくもまぁ、平気でマシンガン向けられますね。

「…」

さて、どうしたものか。

折角意気込んでやって来たのに、まさかこんなマシンガンで「歓迎」されるとはな。

無理矢理…突破しようと思えば出来るが。

そんなことをすれば、この強面構成員は任務から帰ってきたエペルとミミニアに、今日のことを報告するだろう。

自分達がいない間に、僕がセルテリシアに近づいた、などと知れば…。

そりゃあもう、怒髪天を衝いて怒るだろう。

それどころか、余計エペル達の警戒心を強めるだけ。

信用を得るなんて夢のまた夢。

…強引な手段には出るべきじゃないですね。

セルテリシアに会うのにアポイントが必要なら、そうしよう。

ここまで来て、むざむざ引き下がるのは残念だが。

身の安全を確保する為には、そうするしかない…と。

思っていたそのとき。

運命の神様なんて信じちゃいないが、その神様が僕に微笑んだ。

「…これは何の騒ぎですか?」

強面構成員の後ろ、重厚な観音扉が開き。

中から出てきたのは、件のセルテリシア・リバニーその人であった。

…おっと、これは…。

どうやら、風向きが変わってきたようですね?