ルルシーは、俺の差し伸べた手を取った。

「分かった。俺も同じ気持ちだ…。お前の言う通りにしよう」

…ありがとうございます。 

そう言ってくれると思ってましたよ。ルルシーなら。

組織や同僚への義理立てよりも大切なことがあると、ルルシーなら分かってくれると思ってました。
 
「…そういう訳です、セルテリシアさん」

俺はルルシーの手を取って、セルテリシアに向き直った。

今この瞬間から、セルテリシアは俺の上司になる訳だ。

あまり威厳のない上司だが、まぁ問題なかろう。 

むしろ、与し易くて扱いやすい上司になったことを喜ぼう。

下手に束縛されるのは面倒だからな。

「『ブルーローズ・ユニオン』への移籍、謹んで承諾します」

「良いんですか…?本当に…?」

自分から提案した癖に、信じられないような顔で尋ねるセルテリシア。

あなたが引き抜きに来たんでしょうが。

「えぇ。でも…あなたが先程口にした転職条件は、ちゃんと守ってもらいますよ」

移籍した途端、この約束はなかったことにされたんじゃ困る。

「はい、勿論です。『ブルーローズ・ユニオン』の中に、お二人の居場所を確約します」

セルテリシアは真摯な眼差しで、確かに頷いた。

どうやら、嘘をつくのが得意なタイプではなさそうだ。

なら信じて良いな。

「では今この瞬間から、俺とルルシーはあなたの部下ってことで、宜しくお願いします」

「はい…!」

説得が上手く行って、非常に嬉しそうなセルテリシアである。

セルテリシアにとっても、駄目元で挑んだ移籍の話が上手くまとまって、感無量といったところか。 

良かったですね。俺は素直で聞き分けの良い大人ですから。

じゃあ、これから宜しく。

今から俺は、『青薔薇連合会』の幹部…もとい。

サナリ派筆頭組織『ブルーローズ・ユニオン』の幹部ということで、宜しくお願いします。

と言っても、同じ『青薔薇連合会』という組織の中での転職なので、気分的にはあまり変わらないけど。

ただ、この瞬間から…アイズレンシアやアリューシャやシュノさんや。

今この場にいる、セルテリシアの誘いを断ったルリシヤや。

今も病院で回復のときを待っている、アシュトーリアさん。

これらの…新『青薔薇連合会』派の同僚達と、敵対することになった。

それだけの話です。

でもその代わり、ルルシーと俺の居場所が守られるのだから。

それ以上に大切なことはない。そうでしよう?

俺はただ、一番大切なものを優先しただけの話です。

悪いですね。

所詮、俺はこんなものですよ。