成程ね。よく分かりました。

「…どうですか?」

セルテリシアは、手に汗握るといった様子で尋ねた。

彼女にとっても厳しい場面なのだろう。

交渉決裂したら、セルテリシア曰くアイズより危険な相手、とやらと敵対する羽目になる訳で。

セルテリシアとしても、それは望むところではない。

俺だってそうだよ。

俺は、俺以外の三人をちらりと見た。

ルルシーもルリシヤもルーチェスも、同じように互いの顔を見合わせた。

しばしのアイコンタクトの末、互いに結論を下した。

「…ふむ、悪いが俺はお断りだ」

最初に口火を切ったのは、ルリシヤだった。

途端にセルテリシアの顔が曇った。

「…何故ですか?」

「自分の所属する組織を、これ以上コロコロ変えるのは御免被りたくてな」

とのこと。

ルリシヤのその気持ち、分からなくもない。

ルリシヤの場合、以前いた『セント・ニュクス』は組織ごと消滅してしまったからな。

『青薔薇連合会』にようやく安住の地を得た以上、これ以上自分の所属する組織が変わるのは耐えられないのだろう。

えぇ、その気持ちは分かります。

俺だって、かつて帝国騎士団を追放された身ですから。

確固たる自分の居場所を見つけるのは、とても難しい。

だからこそ、慎重に考え慎重に動かなければならないんです。

「…そうですか。それは残念です」

セルテリシアは本当に残念そうだった。

しかし、落ち込む必要はない。

ルリシヤは断ったけど、俺は…、

「…あなたはどうしますか。ルレイアさん」

と、セルテリシアは俺を縋るような眼差しで見つめた。

俺にまで断られたら、わざわざ下手くそな尾行をしてまで、俺に接触してきた意味がなくなりますもんね。

…さてと、それじゃあ。

「…ルルシー、ここは一つ…セルテリシアの提案に乗ってみませんか?」

「…あぁ…?」

俺がそう提案すると、ルルシーは怪訝そうな顔をしてこちらを見た。

驚愕しない辺り、ちょっと予測していたらしいな。