…セルテリシアの指示で、俺達を尾行しているのだろうと思っていたが。

まさか、御本人が一緒に乗っていたとは。

何やってんだ?この女…。

アホなの?

「待ってください、私達は…私は、あなた方を傷つける為に追っていたんじゃないんです…!」

などと供述しており。

傷つける為じゃなかったら、何の為につけ回していたんだ?

それに…このセルテリシアの態度。
 
さっき、アイズに向かって舐め腐った口を利いていたあの女と、本当に同一人物なのかと疑いたくなった。

「なら話してください。何の為に俺達をつけてたんです」

とりあえず、話くらいは聞いてやろう。ぶん殴る前にな。

誰もが分かっているだろう。

今ここで俺が、「勢い余って」「うっかり」セルテリシアを殺してしまったら。

少なくとも、アイズが次期首領の座を脅かされることはなくなるのだと。

するとセルテリシアは、あろうことか。

「私、あなたと…話がしたかったんです。ルレイア・ティシェリーさん…」

俺の目をじっと見つめて、懇願するかのようにそう言った。

…あ?

…本当に人気者か?俺…。

それどころか、セルテリシアは更にとんでもないことを言った。

「お願いです、ルレイアさん。今ここで…『青薔薇連合会』離反して、『ブルーローズ・ユニオン』に来てください」

「…」

…この展開は、さすがに予想していなかった。

冗談言ってるのかと思ったが、セルテリシアの顔は真面目そのものだった。

こいつ…正気か?

帝国自警団にも誘われるし、今度は『ブルーローズ・ユニオン』にまで引き抜かれてしまった。

俺ってやっぱり人気者だな。

あちこちの組織から引っ張りだこ。

それが嬉しい誘いかどうかは、別の話。

「…馬鹿なことを言いますね。俺はルルシーと…」

「勿論、ルルシーさんも一緒に来てください」

…あぁ?

「お二人共に、『ブルーローズ・ユニオン』の幹部の座をお約束します。だから…」

「…俺とルルシーに、『青薔薇連合会』を裏切れと?」

「あなたは『青薔薇連合会』そのものに執着している訳ではないんでしょう?ただ、ルルシーさんと一緒にいられる場所が欲しいだけ…」

ほう。よく知ってるじゃないですか。

その通りですよ。

「何を言ってるんだ、お前…」

ルルシーは呆然として、セルテリシアの言葉を理解しかねているようだった。

まぁまぁ、少しくらい聞いてあげましょうよ。

小娘の戯言って奴をね。

「あなたとルルシーさんの『居場所』を約束します。だから…『ブルーローズ・ユニオン』で、私のもとで働いてください」

「そんなことをして、俺に何のメリットがあるんですかね?」

俺とルルシーの「居場所」なら、わざわざ『ブルーローズ・ユニオン』に浮気しなくても、『青薔薇連合会』の中にある。

わざわざ俺達が『青薔薇連合会』を離反する必要はない。

それでも敢えて『ブルーローズ・ユニオン』に移籍しろと言うからには、それなりのメリットがあるんでしょうね?

そうでもなきゃ、引き抜きは成功しませんよ。