俺達を尾行していたシルバーの車両は、慌てて追いかけてきた。

もう少し連中が冷静だったら、その時点で異変を察知して撤退していただろう。

しかし、素直に追いかけてきたところを見るに…やはり俺の予想通り、連中はかなり焦っているようだ。

馬鹿な奴らだ。

じゃあ、俺達も容赦なくやらせてもらおうか。

のこのこと交差点の真ん中に入ってきた、シルバーの車両目掛けて。

交差点の左から俺が、右からはルリシヤが…ルリシヤお手製の閃光弾をぶん投げた。

弾けるような音がして、強い光が交差点を覆った。

…さぁ、これでどうだ?

目を庇いながら顔を上げてみると、車両の中は、窓越しでも分かる大パニック状態であった。

まさかこんな奇襲を受けるとは思ってなかったらしい。

済みませんね。

奇襲は、俺達の得意分野なもので。

車両の中がパニックになっているところに、畳み掛けるようにルルシーとルーチェスが駆け出した。

それぞれ運転席と助手席のドアの鍵を、拳銃で撃ち抜いて壊し。

素早くドアを開くと、中に乗り込んで拳銃を向けた。

ここまでの出来事、僅か数秒。

敵が事態を理解する前に、いち早く制圧する。

奇襲の醍醐味ですよね。

ルルシーとルーチェスに拳銃を向けられ、助手席と運転席にいた二人は、青ざめて両手を上げた。

下手に抵抗しなかったのは賢明だな。

俺達としても助かりましたよ。

抵抗されたら、殺さなきゃならなくなるところだった。

殺す前に…聞かなきゃならないことがたくさんありますからね。

「随分と長いこと、俺達をつけていたようですが…」

俺はルルシーの後ろから、車両の中に向かって言った。

「…何か御用ですか?」

にっこりと、最高に「素敵」な笑顔で尋ねた。

知らない人が相手でも礼儀正しい俺。素晴らしい。

何だか二人共青ざめてる気がするけど、多分気のせいだな。

「俺達を奇襲して殺すつもりだったか?」

ルルシーが尋ねた。

それとも、俺達の帰り道をつけて、住所を調べたかったとか?

いずれにしても、悪意のない尾行は有り得ない。

喋ってもらいますよ。洗いざらい。

「セルテリシアの指示ですか?あの女が何か…」

と、俺が言いかけたそのとき。

「待って。待ってください!」

車両の後部座席から、聞き覚えのある声がした。

…あ?

「お願いです、銃を下ろしてください…!」

「…あなた…」

驚いたことに。

車両の後部座席に乗っていたのは、同じく青ざめた顔の『ブルーローズ・ユニオン』の代表。

サナリ派のリーダー、セルテリシア・リバニーその人であった。