――――――…裏切られた気分だった。

腹立たしくてならなかった。

帝国自警団の団長ブロテ・ルリシアスは、『青薔薇連合会』を…そしてルレイア・ティシェリーを危険視していた。

奴を捕らえ、徹底的に叩いて埃を出し、刑務所にぶち込んで二度と出さない。

当然そのくらいの処置を取るものとして、期待していた。

実際ブロテ団長は、ルレイア・ティシェリーを拘束し、帝国自警団本部の一室で監禁した。

そこまでは良かった。

名目は「保護」だったが、拘束期間中に奴の悪事の証拠を見つけ、そのまま逮捕に移行することは充分可能だった。

俺はそれを期待して、事態の推移を見守っていた。

…それなのに。

ルレイア・ティシェリーは、一ヶ月の期限を待たずして解放された。

しかもあろうことか、ブロテ団長から平謝りされながら、『青薔薇連合会』本部まで送ってもらい、悠々と帰っていったそうじゃないか。

奴の憎たらしい笑顔が思い浮かび、叫び出したくなる衝動に駆られた。

逮捕どころか、「保護」したことを謝られつつ帰っていくとは。

良い恥晒しだ。

何故そのようなことになってしまったのか。ブロテ団長は、「全て誤解だった」と説明していたが。

あれは嘘に決まっている。

ブロテ団長は騙されているのだ。本人も気づかないままに。

ルレイア・ティシェリーのいつもの手口だ。

舌先三寸で相手を騙し、丸め込み、自分の都合の良いように操るのは。

どのような言葉を弄して、ブロテ団長を騙したのは知らないが。

疑うことなく、あっさりとあいつの手管に嵌まってしまったブロテ団長に対して、どうにももどかしい思いでいっぱいだった。

あんな奴にみすみす騙されないでくれ。帝国自警団の団長ともあろう者が。