「な、何で…皇太子殿下が自ら『青薔薇連合会』に…」

それは俺ではなく、是非ともルーチェス本人に聞いてあげて欲しい。

きっと喜んで教えてくれると思いますよ。

でも、敢えて俺が説明するとしたら…。

「俺に憧れて来てくれたそうですよ」

いやぁ、今思い出しても愉快。

「き、君に?」

「えぇ。頭のお固い王家での生活に、ほとほと嫌気が差していたそうで。そんな中、裏社会で超絶活躍する格好良い俺の噂を聞いて憧れて…会いに来てくれたそうです」

ベルガモット王家に、こんな見込みのある青年がいたとは。

くそったれな連中しかいないと思っていたが、案外王族も捨てたものではないのかもしれない。

「単身『青薔薇連合会』に乗り込んできて、ルリシヤ…幹部と一騎打ちしたそうですよ。度胸ありますよね」

「…!?」

驚いているところ申し訳ないが、嘘をついている訳ではない。

全て、紛れもない事実である。

「その後、正式に俺に弟子入りして…今では、ベルガモット王室とは縁を切っています」

「な、何故そんなことを?」

だから、それはルーチェスに聞いてやってくれ。

俺に聞かれても。

「ついでに、そこそこ美人の嫁ももらってるんですよ」

「えっ…」

「元風俗嬢の一般女性です」

「…」

目を白黒させるブロテ。

ベルガモット王家の皇太子ともあろう者が、借金まみれだった元風俗嬢と結婚するとは。

いやはや。ルーチェスの人生って、なかなか波乱万丈だな。

自伝小説出したら、ベストセラー間違い無し。

「今のルーチェスは、れっきとした『青薔薇連合会』の一員。幹部クラスの座について、立派にマフィアやってますよ」

正しくは、幹部ではなく『裏幹部』だが。

しかし、幹部であることに変わりはない。

何処に出しても恥ずかしくない、立派な『青薔薇連合会』の幹部である。

いやぁ。弟子の成長とは嬉しいものだ。

師匠として、俺も鼻が高い。

「そんな…。人質じゃなくて…自ら『青薔薇連合会』に…?」

「周囲の反対を押し切って、ですけどね」

「…!」

…分かってもらえたか?

絶句しているところ悪いが、誤解が解けたかどうか確認したい。

「まだ足りません?他にはどんな誤解をしてるんですか?」

この際だから、全部言ってみろ。

全部論破してやる。

「ご、誤解…。…本当に…?」

どうやら、まだ信じきれていない様子。

「信じられないなら、誰でも聞いてみれば良いじゃないですか。オルタンスでも、ルアリスでも。ルーチェス本人でも良いですよ」

きっと皆、口を揃えて俺と同じことを言うだろう。

そのときになって、ようやく信じるのかる

「…分かりました?」

「…」

絶句していたブロテは、しばし無言で俺を見つめ。

そして、カーッと顔を赤くした。

「そ、そ、そんな…。し、知らなかっ…」

「…」

「ず、ずっと勘違いしてたなんて…恥ずかしい…!」

…気持ち悪いから、俺の前で恥ずかしがるのやめろ。

反吐が出そうになったぞ、今。

帝国自警団の団長は、意外と乙女っぽいところがあるってことで。

一生知りたくない情報だった。