しかし。

「そ、それじゃあ…!」

まだ抗弁しようとするブロテである。

何だよ。この際だから何でも言ってみろ。

俺がいかに清らかで素晴らしい大人であるか、証明してやる。

「『frontier』というアーティストのことは?彼らをけしかけて、利用して金儲けしてるって…」

だってよ。

そんなこと、ルトリアさんに言ってみろ。

多分あの人、口をポカンと開けて絶句するはずだ。

「確かに俺は、『frontier』というアーティストをプロデュースしてますよ?」

それは認める。

先日の夏フェスだって、俺が企画して主催したイベントだ。

「でも、あのグループは俺が作ったんじゃありませんよ」

「…え?」

「元々彼らは、細々とインターネットや地元のライブハウスで活動してたんですけど、段々と人気が出てきて、回り回って事務所に所属することになったんです」

で、その事務所が…『青薔薇連合会』系列の企業だったってだけ。

最初の頃は、俺ではなくアイズが受け持っていた仕事だ。

それを俺が引き継いだ形になる。

「金儲けの道具って言いますけどね。俺だって『frontier』の大ファンなんですからね?」

『frontier』の魅力に惚れたからこそ、彼らをプロデュースする気にもなった訳で。

「…そ、そんな…」

分かってもらえたか?

「納得しました?まだ足りませんか?」

口でいくら言い訳しても、信用出来ないと?

証拠を見せないと納得出来ないか?

まぁ、それなら各機関に聞いて回れば良いだけだ。

ルアリスやアシミム…いや、アシミムは簡単に連絡がつかないかもしれないが…。

『frontier』のルトリアさんに、直接尋ねてみても良いぞ。

その方がすっきりするだろう。俺も、ブロテも。

「でも…!それなら…!」

何だ。まだ言いたいことがあるのか?

しつこい女だ。

「何故、ベルガモット王家の皇太子を人質に取った?その件についてはどう説明を…」

あぁ。そういやそんなことも言ってたっけ。

ブロテは各種色んな誤解をしているが、その誤解が一番馬鹿馬鹿しいと思う。

ブロテの言う、ベルガモット王家の皇太子っていうのは…ルーチェスのことだろう?

確かにルーチェスは、ベルガモット王家の皇太子だ。

…「元」皇太子だけどな。

今のルーチェスが、ベルガモット王室の名を名乗ることはない。

「彼は自分から『青薔薇連合会』に来たんです。俺が人質に取った訳ではありません」

「…え…」

懐かしいな。ルーチェスが初めて『青薔薇連合会』に来たとき。

残念ながら、あのとき俺は『青薔薇連合会』本部にはいなかった。

代わりにルーチェスを「歓迎」したのは、ルリシヤだったとか。

白熱した試合だったろうな。是非ともこの目で見たかったものだ。