…こうして。

役目を終えたルシードは、早々にルティス帝国を後にした。

折角来たんだから、もうちょっと…ルティス帝国観光でも楽しんでいけば良いのに。

シェルドニア王国出身のルシードは、ルティス帝国みたいな「治安の悪い」国に、長居したくないのだろう。

治安が悪くて結構。お宅の国が異常過ぎるだけだ。

きっと、あちこち真っ白な景色と、そして『白亜の塔』が恋しいのだろう。

帰れ帰れ。二度と来るなよ。

…あ。

「折角開発したカラーボール…。使う機会がありませんでしたね」

非常に残念だ。

ルシードがどんな反応をするか、想像して楽しみにしてたのに…。

「そうだな…。次の機会に持ち越しだな」

「残念ですね…」

ルリシヤと二人、しょんぼりと落胆。

…しているのを見て、ルルシーは眉をひそめていた。

きっとルルシーも、カラーボールの戦果を見られなくて残念がっているのだろう。

分かる、分かりますよ。

それなら。

「妥協して、ルアリスにでもぶん投げましょうか?ちょっと箱庭帝国から呼びつけて」

「ルアリスで妥協をするな、馬鹿。相手は一国の代表だぞ」

すかさず、ルルシーが俺を止めた。

一国の代表ったって、あいつはただの元童貞イキリ坊主じゃないですか。

…仕方ない。

カラーボールの出番は、もう少しお預けだな。






ルシードの来訪は、それで終わり。

あとは書面で賠償の話をして、ひとまずサシャ・バールレンの件は一件落着。

…俺達は、そう思っていたのだが…。