さて、気を取り直して。

ルシードを会議室に招いて、早速本題に入った。

出した紅茶に、塩を入れるのは勘弁してやったのだが。

そもそもルシードは、俺達が出したものに手を付ける気はないらしく、一口も飲まなかった。

ちっ。つまらん奴め。

…さて、それはともかく。

「で?ハゲはどうなったんですか」

俺は早速、一番聞きたいことを尋ねた。

途端、ルルシーがちょっとずっこけていた。

大丈夫ですか、ルルシー。

「お前な…。言い方に気をつけろよ。ハゲって…」

「だってハゲでしょう?」

「そりゃそうだけども…」

通じるんだから、それで良いんだよ。

あんなろくでなしの馬鹿貴族は、ハゲとでも呼んでおけば良い。

むしろ、ハゲ呼ばわりくらいじゃ優しいだろう。

奴のしたことを思えばな。

「…サシャ・バールレンのことだな?」

と、ルシード。

ほら、ハゲで通じてる。

「勿論」

「彼は、バールレン家の当主であり、兄でもあるテナイ・バールレンによって、地方の別宅に移住させられた」

…ほう。

島流しってことか。

それはそれは…随分と生ぬるい罰だことで。

「その程度で済むと思ってるんですか?あの馬鹿兄は」

「移住と言えば聞こえは良いが、実質軟禁状態だ。サシャ・バールレンには常に監視が付き、自分の部屋から出ることも自由には出来ない」

ふーん。

つまり、その別荘が監獄代わりだと?随分と優雅な監獄で、結構じゃないか。

そんな監獄に入れてもらえるなんて、羨ましいこと。

「更に、テナイ・バールレンはサシャの貴族権を剥奪した。現在サシャは、バールレン家の人間ではない」

貴族権の剥奪、ね。

何だか聞き覚えがある罰で、気分が悪くなりそうですが。

「それなのに、バールレン家の別宅に監禁されているとは。おかしな話ですね」

貴族権を剥奪され、今やサシャは、バールレンの名を名乗ることを許されないんだろう?

それなのに、住んでいるのはバールレン家所有の別宅?

意味不明ですね。

「それとも、下働きとして別宅に雇われでもしました?」

「テナイ・バールレン卿は、弟君の罪に責任を感じ、今度こそ自分の手元に置いて監視したいのだそうだ」

「監視?別宅に住まわせているのに、どうやって監視するんです?」

自分は王都にいて、弟は地方にいるんだろう?

どうやって監視するつもりだ?

その処置は、要するに…。

「貴族権の剥奪だの、島流しだのして誤魔化そうとしているだけで…。結局は、弟を家から追い出したくないんでしょう?」

全く、随分と甘ちゃんな貴族じゃないですか。

たった一回、無実の「不祥事」を起こしただけで。

釈明の余地すら与えず、容赦なく貴族権を剥奪して、俺を市井に放り投げた…あの忌まわしいウィスタリア家に。

是非とも、爪の垢を煎じて飲ませてあげて欲しいものですね。