「何って、この後ルシードが来るから、『歓迎会』の用意をしてるんじゃないですか」

お客様を丁重におもてなしするのは、ホストの役目だろう?

だから俺は今日の為に、色々用意したんですよ。

「『歓迎会』だと…?」
 
「えぇ。まず入ってきた瞬間を目掛けて、これをスローインします」

「…何だそれは?」

「それは俺が作った、シェルドニアジゴクザラメの激甘カラーボールだ」

と、ルリシヤが答えた。

ちょっと美味しそうですよね。地獄のように甘いらしいけど。

「そんなものを出合い頭にぶん投げることの、何が歓迎なんだ?」

「違いますよ、ルルシー。それはデコイです」

「デコイ…?」

ルシードの実力の高さは、俺もよく知るところ。

出合い頭とはいえ、目の前に放り投げられたザラメボールくらいなら、あっさりと避けられる。

あるいは、奴のご自慢の刀で一刀両断されるだろう。

それでは意味がない。

従って、ザラメボールはただのデコイ。

「本命は、その後アリューシャが撃ち込んでくれる…これです」

「…それは何だ?」

それは、俺の口からは説明出来ないな。

是非とも、開発者のルリシヤに聞いて欲しい。

「ルリシヤ、説明をお願いします」

「任せてくれ。これは夏季限定サマーバケーションボールと言って、その名の通り夏をイメージしたカラーボールだ」

「…夏…?」

俺も説明を聞かせてもらったけど、凄く豪華で愉快なテーマでしたよ。

「炸裂すると同時に、スイカの種、セミの抜け殻、かき氷のシロップが飛び出す仕組みでな。匂いは夏の風物詩、蚊取り線香を完全再現して…」

「お前は、何でそんな馬鹿なものを作ってるんだ…?」

ルルシー。ドン引き気味のマジレスやめて。

「しかも、それをアリューシャ先輩のライフルで撃てるように小型化した。苦労したぞ」

ルリシヤの企業努力が光る一品となっております。

素晴らしい。

「お前には類稀な才能があるのに、何でそんな才能の無駄遣いをするんだ?」

だから、マジレスやめてくださいってば。

それは言わないお約束でしょう。ねぇ?

才能とは、無駄遣いする為にあるんですよ。

「それにアリューシャまで。下らん悪戯の片棒を担ぐんじゃない」

下らないとは失礼な。

おもてなしは大事ですよ。

「だって、ルレ公がポテチくれるって言うからさー」

「ポテチに釣られるな」

「しかも、ブラックソルト味って奴だぜ?すげー格好良いじゃん!」

「そんな理由で悪戯に加担するな。ったく…」

ルルシーは、はぁ、と深々溜め息をついた。

何その溜め息。官能的。

「それから、ルーチェス」

「はい?」

「お前はルシードに会ったこともないだろう。何でお前まで、飾り付けに参加してるんだ?」

そういえば、ルーチェスはルシードに会ったことないんだっけ。

ルーチェスが俺の弟子になったのは、シェルドニア王国の先王暗殺事件が起きた後だったもんな。

「師匠がやることを応援する。弟子として当然でしょう?それが理由です」

うわぁ、頼もしい。

「…」

ルルシーは無言で、そしてジト目でルーチェスを見つめ。

「…はぁ」

またしても、深々と溜め息をついたのだった。

官能的で素敵。思わず涎が出てしまいそうだった。