――――――…乗っていた飛行機が、ルティス帝国国際空港に降り立ち。

俺は、生まれて初めて…ルティス帝国の大地を踏みしめた。

最初にルレイア・ティシェリー達と会ったとき…『ホワイト・ドリーム号』で、ルティス帝国の領海に入ったことはあるが。

あのときは船に留まっていて、ルティス帝国に上陸した訳ではなかった。

今のところ、まだ空港しか見ていないが…さすがに、シェルドニア王国とは大きく違っている。

シェルドニア王国では、飛行機の機体も、機内のシートも通路も。

配られる毛布の一枚からして、全てが真っ白だが。

ルティス帝国のそれらは、白ではなく、水色っぽい色で統一されていた。

空港の外観も、白一色のシェルドニア王国と比べたら、随分とカラフルに見えた。

…何もかも、見慣れないものばかりだ。

正直あまり落ち着かないが、これも我が主…アシミム・ヘールシュミット女王陛下に頼まれた使命だ。

そう思えば、苦痛ではない。

我が国の上流貴族、バールレン家の次男が起こした、この度の不祥事。

その件について、『青薔薇連合会』に報告しに来た。

報告をするだけなら、書面を送るだけで簡単に済む。

…しかし、『青薔薇連合会』はそのような「無礼」を許してくれる組織ではない。

たかが一国のマフィア…と思うが、その影響力は、ルティス帝国の帝国騎士団にも匹敵する。

ましてや『青薔薇連合会』は、先王ミレドの暗殺事件や、シェルドニア王国の『白亜の塔』に関する秘密を知っている。

決して、軽んじて良い相手ではなかった。

その為に我が主は、わざわざ俺を派遣したのだ。

『青薔薇連合会』に、礼儀を尽くす為に。

他国のマフィアに頭を下げるのは本意ではない。

しかし、これも祖国と主の為。
 
そう思えば、大した苦痛ではなかった。