【side緋】
『白』に戻って次の日───。
私にはある問題が発生していた。
「緋……もうやめときなって……!」
「そうよ。それ以上やってあなたが倒れたらどうするつもりなのよ……!」
「でもっ!やらないと、もう……追いつけないよおっ!!」
それは、勉強……!
勉強をしていなかったのは3日間だけなのに、こういう時に限ってどの教科もめちゃくちゃ早く進んでしまったらしい。
うぅ〜……。
困っていた私に、鈴ちゃんと結衣ちゃんが勉強会に誘ってくれた。
とりあえず今は課題を進めている。
「でもさ、緋は昔からすぐ覚えちゃうからそんなに焦らなくてもいいんじゃない?」
「そ、そんなことないよっ」
そんなにすぐに完璧に覚えられるわけじゃ、ないし……。
「でも、明日テストでしょ?緋はともかく、鈴は真面目にやりなさいよ」
「くっ……優等生2人に囲まれてると楽じゃないなぁ……」
渋い顔をしながら課題とにらめっこしている鈴ちゃん。
私も、頑張らないとっ……!!
1時間後。
ちょうど数学の課題が終わった頃。
「あー……疲れたぁ……って緋、スマホ鳴ってない?」
「あれ?ほんとだ。ありがとう、鈴ちゃんっ」
スマホには薫と表示されていた。
「薫?どうしたの?」
『んー……今の今まで朱奈がいたから話せるかなと思ったんだけどすぐ相手が緋だって気づかれちゃってね』
千歳が薫は嫌がらせしかしてこないとか文句をいつも聞くけど、本当はちゃんと優しいんだよね。
「……そっか。ありがとう薫」
『まあ、また今度だね。それじゃあ』
そう言って通話が終了する。
「あら、誰だったの?」
「薫だよ。朱奈ちゃんと話せる機会を作ってくれようとしてたんだって」
「朱奈……さん?って誰のことなの?」
結衣ちゃんがそう聞いてくる。
そういえば、まだ何も言ってないんだった。
「私の双子のお姉ちゃんだよ」
「緋って双子だったのね」
「うん」
最近は全然会えてない……なんて言う必要はないよね。
「あ、そうだ!今度の土曜日ぐらいにさ、みんなで遊びに行かない?」
私のその気持ちを察したのか、鈴ちゃんが話題を変えるようにそう言った。
「みんなで服とか買いに行こ!」
「いいわね、それ。私ファッションセンスには自信あるの」
お菓子作りの材料、欲しいものリストアップしておかないとっ……!
「へー。それ、俺も連れてってよ」
そんな声とともに私の背中にぎゅっとしがみついてきた。
「げっ……」
「ちと、せ……っ?」
「で?君たち2人……なんで俺に秘密で緋を連れ出そうとしてるのかな」
「彼氏でもないくせに……」
「男の嫉妬は見にくいですよ、衣川くん」
2人は嫌そうに呟く。
「悪かったな、めんどくさくて」
「あぅぅ……」
千歳にぎゅってしてもらうのは好きだけど、ずっとは、心臓もたないよっ……。
「あー……可愛い」
「緋、俺もついて行っていいよな、それ」
「う、うん。私は、いいけど……」
「……………」
「………………」
すごく悩んでる2人。
私のせいで迷わせちゃってる……よね……。
どうしよう……。
「ダメだね」
「そうよね」
2人はサラッと言った。
「はあ?」
「あのね、衣川くん。女子だけで行こうとしてる中入ってくるのは失礼じゃない?」
うっ、という表情をする千歳。
「それに、いつも緋を独り占めしてるんだから、1日ぐらい私たちに譲ってくれてもいいのでは?」
ぐぬぬ、という顔をして長考の末。
「……はあ。分かったよ」
千歳が折れた。
「ようやく緋を独り占めできるー!」
嬉しそうな鈴ちゃんの声を聞きながら、視線を横に動かすと、誰が見てもわかるぐらいしょんぼりしていた。
「千歳……その……ごめんなさい」
「……いーよ。でも、早く、帰ってきてね?」
う、上目遣い……!
かわいいなぁ、もうっ。
「うんっ」
土曜日。
ショッピングセンターに着いた。
まだ2人は来ていないみたい。
こんなに早く着いちゃうなら歩いても良かったかなぁ。
というか、1人でいるなんて久しぶりで不安になってくる。
あぅ……。
人が沢山いるところ、苦手だなぁ……。
服とか大丈夫かなっ。
「ひーいーろーーー!!!」
「ひゃああああっ!?」
「ちょっと、鈴!何してるの!」
そう叫びながら鈴ちゃんが飛びついてきた。
心臓が……止まるかと思ったっ……。
「お、おはよう……っ」
「ああ……可愛い……っ」
によによしている鈴ちゃん。
改めて2人を見ると。
鈴ちゃんは右肩がオフショルダーになっているくすみグリーンのトップスに、カフェオレ色のパンツを着ていて、耳には大きめのイヤリングでカジュアルな感じがする。
結衣ちゃんはパーカーと薄い上着にショートパンツだけど、黒のロングブーツでスタイルの良さがわかって、頭に大きいリボンをつけてるのも可愛い。
とにかくみんなおしゃれ。
「さぁて、あのひっつき虫もいないことだし、今日はめいっぱい遊ぶぞーー!!」
鈴ちゃんがそう言いながら私と結衣ちゃんの手を引いていく。
とりあえず初めに来たのは洋服屋さん。
「ねえ鈴。あれ緋に似合うと思わない?」
「え!めっちゃいい〜!結衣ならこれだと思うんだよねっ」
「あんまり着ない系統だけど、いいわね」
ファッションセンス皆無な私には全く分からない会話がどんどんと続いていく。
「「緋!!」」
「ふ、2人ともどうし……」
「これとこれ!」
「試着してくれないかしら!?」
「え、えと、あのっ……」
なにがなんだかわからないまま色んな洋服を試着。
2人はいっぱい可愛いって言ってくれるけど、似合ってないよね……。
30分くらいかけてふらふらになりながらお店を出る。
お人形さんっていっつもこんな気分なのかな……大変だ……。
その様子を見た鈴ちゃんが休憩のために美味しそうなドーナツ屋さんに連れてってくれた。
「あうううぅ……」
「大丈夫?まだ行きたいところはいっぱいあるよ?」
「……頑張るっ」
『白』に戻って次の日───。
私にはある問題が発生していた。
「緋……もうやめときなって……!」
「そうよ。それ以上やってあなたが倒れたらどうするつもりなのよ……!」
「でもっ!やらないと、もう……追いつけないよおっ!!」
それは、勉強……!
勉強をしていなかったのは3日間だけなのに、こういう時に限ってどの教科もめちゃくちゃ早く進んでしまったらしい。
うぅ〜……。
困っていた私に、鈴ちゃんと結衣ちゃんが勉強会に誘ってくれた。
とりあえず今は課題を進めている。
「でもさ、緋は昔からすぐ覚えちゃうからそんなに焦らなくてもいいんじゃない?」
「そ、そんなことないよっ」
そんなにすぐに完璧に覚えられるわけじゃ、ないし……。
「でも、明日テストでしょ?緋はともかく、鈴は真面目にやりなさいよ」
「くっ……優等生2人に囲まれてると楽じゃないなぁ……」
渋い顔をしながら課題とにらめっこしている鈴ちゃん。
私も、頑張らないとっ……!!
1時間後。
ちょうど数学の課題が終わった頃。
「あー……疲れたぁ……って緋、スマホ鳴ってない?」
「あれ?ほんとだ。ありがとう、鈴ちゃんっ」
スマホには薫と表示されていた。
「薫?どうしたの?」
『んー……今の今まで朱奈がいたから話せるかなと思ったんだけどすぐ相手が緋だって気づかれちゃってね』
千歳が薫は嫌がらせしかしてこないとか文句をいつも聞くけど、本当はちゃんと優しいんだよね。
「……そっか。ありがとう薫」
『まあ、また今度だね。それじゃあ』
そう言って通話が終了する。
「あら、誰だったの?」
「薫だよ。朱奈ちゃんと話せる機会を作ってくれようとしてたんだって」
「朱奈……さん?って誰のことなの?」
結衣ちゃんがそう聞いてくる。
そういえば、まだ何も言ってないんだった。
「私の双子のお姉ちゃんだよ」
「緋って双子だったのね」
「うん」
最近は全然会えてない……なんて言う必要はないよね。
「あ、そうだ!今度の土曜日ぐらいにさ、みんなで遊びに行かない?」
私のその気持ちを察したのか、鈴ちゃんが話題を変えるようにそう言った。
「みんなで服とか買いに行こ!」
「いいわね、それ。私ファッションセンスには自信あるの」
お菓子作りの材料、欲しいものリストアップしておかないとっ……!
「へー。それ、俺も連れてってよ」
そんな声とともに私の背中にぎゅっとしがみついてきた。
「げっ……」
「ちと、せ……っ?」
「で?君たち2人……なんで俺に秘密で緋を連れ出そうとしてるのかな」
「彼氏でもないくせに……」
「男の嫉妬は見にくいですよ、衣川くん」
2人は嫌そうに呟く。
「悪かったな、めんどくさくて」
「あぅぅ……」
千歳にぎゅってしてもらうのは好きだけど、ずっとは、心臓もたないよっ……。
「あー……可愛い」
「緋、俺もついて行っていいよな、それ」
「う、うん。私は、いいけど……」
「……………」
「………………」
すごく悩んでる2人。
私のせいで迷わせちゃってる……よね……。
どうしよう……。
「ダメだね」
「そうよね」
2人はサラッと言った。
「はあ?」
「あのね、衣川くん。女子だけで行こうとしてる中入ってくるのは失礼じゃない?」
うっ、という表情をする千歳。
「それに、いつも緋を独り占めしてるんだから、1日ぐらい私たちに譲ってくれてもいいのでは?」
ぐぬぬ、という顔をして長考の末。
「……はあ。分かったよ」
千歳が折れた。
「ようやく緋を独り占めできるー!」
嬉しそうな鈴ちゃんの声を聞きながら、視線を横に動かすと、誰が見てもわかるぐらいしょんぼりしていた。
「千歳……その……ごめんなさい」
「……いーよ。でも、早く、帰ってきてね?」
う、上目遣い……!
かわいいなぁ、もうっ。
「うんっ」
土曜日。
ショッピングセンターに着いた。
まだ2人は来ていないみたい。
こんなに早く着いちゃうなら歩いても良かったかなぁ。
というか、1人でいるなんて久しぶりで不安になってくる。
あぅ……。
人が沢山いるところ、苦手だなぁ……。
服とか大丈夫かなっ。
「ひーいーろーーー!!!」
「ひゃああああっ!?」
「ちょっと、鈴!何してるの!」
そう叫びながら鈴ちゃんが飛びついてきた。
心臓が……止まるかと思ったっ……。
「お、おはよう……っ」
「ああ……可愛い……っ」
によによしている鈴ちゃん。
改めて2人を見ると。
鈴ちゃんは右肩がオフショルダーになっているくすみグリーンのトップスに、カフェオレ色のパンツを着ていて、耳には大きめのイヤリングでカジュアルな感じがする。
結衣ちゃんはパーカーと薄い上着にショートパンツだけど、黒のロングブーツでスタイルの良さがわかって、頭に大きいリボンをつけてるのも可愛い。
とにかくみんなおしゃれ。
「さぁて、あのひっつき虫もいないことだし、今日はめいっぱい遊ぶぞーー!!」
鈴ちゃんがそう言いながら私と結衣ちゃんの手を引いていく。
とりあえず初めに来たのは洋服屋さん。
「ねえ鈴。あれ緋に似合うと思わない?」
「え!めっちゃいい〜!結衣ならこれだと思うんだよねっ」
「あんまり着ない系統だけど、いいわね」
ファッションセンス皆無な私には全く分からない会話がどんどんと続いていく。
「「緋!!」」
「ふ、2人ともどうし……」
「これとこれ!」
「試着してくれないかしら!?」
「え、えと、あのっ……」
なにがなんだかわからないまま色んな洋服を試着。
2人はいっぱい可愛いって言ってくれるけど、似合ってないよね……。
30分くらいかけてふらふらになりながらお店を出る。
お人形さんっていっつもこんな気分なのかな……大変だ……。
その様子を見た鈴ちゃんが休憩のために美味しそうなドーナツ屋さんに連れてってくれた。
「あうううぅ……」
「大丈夫?まだ行きたいところはいっぱいあるよ?」
「……頑張るっ」