薫のその言葉を聞くと嬉しそうに駆け寄ってくる緋。
そのままぎゅっとしてると、緋が今更思い出したかのように恥ずかしがる。
「あっ……えっと、ごめんね千歳。きゅ、急に抱きついて……」
「むしろ俺はいつもこうしてたいけど?」
「な……ぁ、〜〜〜っ!!」
「……はあ。そういうのは自分たちのところでやってくれないかい?」
「普通ならお前を殴ってるところなんだからこれぐらいいいだろ」
緋とのやり取りを見せつけてやろう、こいつに。
薫はしばらく何かと葛藤するようにこっちを見ていたが、興味を失ったかのようにため息をついた。
「ねえ『黒』の総長さん?1つ質問いいかな?」
後ろから唐突になゆが言った。
「……なんだい」
「姫の人とか幹部っぽい人を全く見てないんだけど、どうしたの〜?」
そういえば朱奈を見てないし、そこまで強いやつがいた訳でもない。
「ああ……僕が緋を攫うからって言ったらなんて言ったと思う?」
「「「1人でやれば」」」
「そ。朱奈は緋って言ったら迷ってたけど来てくれなかったからね」
よくこんなに適当でやってこれたな……。
その言葉を聞いた緋がしゅんとなるのがわかった。
「朱奈ちゃん……会いたかったなぁ……でもやっぱり……」
薫はそんな緋の様子をしばらく黙って見ていたが、仕方なさそうな顔をして。
「緋。……朱奈に会いたいならいつでも『黒』においで。朱奈もその時になったら出てくるだろうから」
「……うん。ありがとう、薫」
行かせたくねえ。