千春はすごい速さで先を走っていく。
「っ……はっ……はあ……」
ようやく追いついた頃には全員息を切らしていた。
「疲れてるところ悪いけど、緋さんと薫さんはこの扉を開けたすぐそこにいる」
そう言いながら千春はコンコンと扉を軽く叩く。
「俺がいられるのはここまでって薫さんに言われてる。……だからあとは頑張ってね兄さん」
俺は千春に感謝の言葉を言ってから、扉の方を向いて吠えるように言った。
「ようやく見つけたぜ……薫!!」
俺が扉を蹴ったすぐ先に薫と緋がいた。
「あーあ思ったより早かったな」
つまらなさそうな顔をして薫は言った。
「そうかよ。じゃあさっさと緋を返せ」
「……別に君のじゃないだろう」
「……いいから緋をこっちに」
「薫、千歳の方に行ってもいいかな……?」
こっちに来たがっているように見えて、すごく嬉しく感じる。
だが、見上げる時に上目遣いになっているのは気に入らない。
俺以外にそのかわいい顔を見せたくない。
「うーん、まあいいよ。僕的にはまあまあ楽しめたし」
案外すんなり許可を出した薫。