幸い、しばらくしたら緋が起きた。



「……」



俺は何も言えず、ただ抱きしめた。



「千歳、ごめんね……も、もう、大丈夫だから……っ」


「大丈夫なんて、簡単に、言うな」



緋は昔から、自分のことは雑にしがちで。


助けてもらうのが苦手で。


誰かが気づいてやらないと、簡単に壊れてしまう。



「で、でもっ」


「緋。人を頼っていいんだ!だから、もう自分を壊そうとするな……!」



きつく、緋が消えないように、抱きしめる。



「ふあっ……ぅっうあああっ!」



緋が、こんなにも声を出して泣けることを、俺は知らなかった。



「うっ……ちとせ……ご、め……」



しばらくすると何とか話せるぐらいまで落ち着いたらしい。



「……千歳……私は、これから、どうしたらいいんだろう……」



緋が少し暗い表情で言う。


俺には2人に何があったのかは知らないけど。



「……緋は朱奈のこと、好きなんだろ。なら、ちゃんとそれを伝えればいいんじゃないか」



たとえ一方的だとしても。


言えば、きっと相手にも届くと思うから。



「……そっか。なにか言わないと、伝わらないよねっ。ありがとう、千歳!」



吹っ切れたような笑顔でそう答えた緋。


……ようやく笑った。



「よーし!今度、朱奈ちゃんに頑張って会いに行ってくる!」


「薫とのいざこざが終わってからにしろよ?」


「そ、そうだった……」



忘れてた、と笑うところが愛おしくてたまらない。