「美子さんには忘れる事ができない男性が心にいるっていう事は最初からわかっていました」

「・・・」

「昨夜、美子さんが出かけた後・・貴女の後をつけさせてもらいました」

「!・・・なッ・・なんて失礼な」

「美子さんにとっては、心にもかけない相手であっても、僕は貴女の夫です。
妻が自分の誕生日に夕方から家を空ける・・
これをただ黙って放置しておけと言うのですか? 」

「でも、後をつけて来るだなんて、、」

私がそう言いながら夫を見上げると、彼の真剣な表情が崩れ
眉を下げながら私を諭すように言葉をつなげた。

「心配だった、、それが理由じゃダメですか? 貴女が僕の妻が心配だった、、、もう、戻って来ないのかもしれない。そう思うと、、、」

「・・・・・」

「美子さん、お願いだ。もう過去は忘れて欲しい。
僕は貴女をずっと愛している。、、今までも、そしてこれからも、、」

「、、あなた、、」

「貴女をずっと待っている僕がいるって事、思い出して下さい。
貴女を僕が幸せにしてあげたい。そうさせて下さい。わかっていただけますか?」


私は夫の真剣な表情を 声も出せずに見上げるだけだった。
結婚をしてからの数年、出来るだけ夫と
顔を合わせないようにして生活をして来た。