「力の強さがすべてじゃない。人を巻きこめる力ってのは、それだけでトップにふさわしい。俺にはなかったが、おまえにはある。西組の総長はそれだけで充分だ」
ふっと笑みをこぼした佐紺先輩。
それは、見守るような包みこむような、そんな温かい笑顔だった。
初めて見せた笑みは、『総長になって認めさせる』と、勢い任せに宣言したわたしの言葉に対する挑発だった。
その頃とは違う。
印象もだいぶ変わった。
あのとき、総長をやるって言ってよかった。
佐紺先輩から総長を奪った形になってしまったけれど、ならなかったらきっと、こうして佐紺先輩や妃崎先輩、西組のみんなと関わることはなかったかもしれない。
「ありがとうございます」
すべての気持ちを込めて感謝を伝えると、佐紺先輩は満足したように踵を返した。