1人でもお客さんがいれば成り立つけど、どうせならたくさんの人に見てもらいたい。
頑張った成果をたくさんの人に届けたい。
とりあえず、第一関門をクリアできたみたいでよかった。
「……悪かったな。『なんの力もない』なんて言って」
「え?」
「転校初日に呼びつけて……あおるためとはいえ、本心じゃないってわけでもなかった」
そんなこと言われたっけ?と思い返す。
……あぁそういえば言われた気がする。
初めて西組のアジトに足を踏みいれたとき。意味がわからないまま総長にさせられた中で。
──いいよな。ヤクザの家系ってだけで、なんの力がなくても総長になれるんだから。
すっかり忘れてた。
それからいろいろありすぎて遠い過去のよう。
「いえ、間違ってないですから。おじいちゃんの孫ってだけで得することのほうが多いし、総長としての風格も強さもないですし……」