「どうせなら円陣組もうぜ」
不意にだれかが発した。そのひと言で、大きな円ができあがる。
そして。
「西ヶ浜。ひと言頼む」
「……は、はい!」
人前に出て話すのはいつだって緊張する。
たくさんの人の前で自分の思いを言葉にするのは恥ずかしい。
だけど、今は違う。
みんなに伝えたい想いがある。
緊張を表情に走らせるみんなの、いつもの笑顔を見たいから。
「みなさん。最優秀作品賞のことは、本番ではとりあえず忘れてください」
「え……?」
「賭けのこともあるし、賞を取るために頑張ってきたけど……本番は、楽しむことを第一に考えてほしいです。賭けのことも賞のことも、ほかの組のことも一旦忘れて。練習でやってきたことは身についてるはずだから、あとは楽しむだけです」
すうーっと息を吸う。
「稽古も含めて、このメンバーでやる最後の公演です。思い残すことがないように!楽しみましょー!」
「「オォォォォォォッ‼︎」」
みんなの声がひとつに重なった。
稽古のおかげか、その声は、どこまでも届きそうなほど大きく力強い声だった。