紫藤先輩とクリスくんの劇はとりあえず観るとか言ってたけど、そんな考えがあったんだ。
「だれよりも勝ちたいのは黒桜先輩なのかもしれませんね」
「そりゃあねぇ。苫のためだもんねぇ」
ハルルがにやにやしながら、わたしの横っ腹を肘でつついてくる。
「もうっ!やめてよ」
「むふふ照れてる照れてる。……でもさ、苫が来てから黒桜先輩のイメージだいぶ変わったよね」
「イメージ?」
聞き返すと、ハルルは「なんていうのかな……」と考えながら探り探り言葉にする。
「苫は、黒桜先輩はあんま物事に興味を示さないって言ってたけどさ。あたしもそういうイメージで一匹狼だと思ってたんだけどさ、本当は興味を示さないんじゃなくて、もうすでに興味を引かれる唯一のものがあって、だからほかはどうでもいいんじゃないかなって思うんだよね」
そんな考えもあるのか。
そういうふうに考えたことはなかったな。