「はぁ〜かっこよかったわぁ。紫藤先輩にああいう最強キャラやらせるのわかってる」


終演後、次の会場に移動中のわたしたち。


興奮冷めやらぬ中、ハルルは当然のごとく桃太郎役の紫藤先輩にうっとり。


「物語自体は陳腐だったけどね。アクションで勢いに任せてるって感じ」

「でも、アレンジの仕方はおもしろいですよね。桃太郎が暴走族の総長で、敵チームの鬼との抗争を描くっていう。わかりやすかったです」

「黒刃高校だから許されたアレンジってところかしら。それはそれで戦略的ね」


最初は批判的だった妃崎先輩も、よくよく考えれば、と唸っている。


先輩の言うとおり、暴走族が身近な黒刃高校の生徒を観客として見立てたからできた内容だった。


だから観やすかったのかもしれない。


「次はクリスくんの劇だ。和男子たのしみー!」

「私は抜けるわ。バイトの友だちから『観にきて』って誘われてるのよ」

「そうなんですね。あとで感想教えてください」


妃崎先輩と別れて次の会場へ向かう。