顔から血の気が引いていく。ポツンと立ち尽くしていると、警察官に声をかけられた。ゆめは警察官がどういうものか分からないので、恐怖で血の気が引いていった。

「きみ、どうしたの? 顔色が悪いけど、大丈夫?」

「あ、あの、えっとあの……一緒に来た人とはぐれちゃって……」

「どこからきたの? 名前は? 誰と一緒にきたの?」

月からきました、月夜美谷之命です、家来と好きな人の兄と来ました。なんて言えない。ゆめは青ざめたまま立ち尽くすしかなかった。

「スマホとか持ってる? 連絡できますか? もしかしたら相手も探してるかもしれないね」

「いや、あの、すまほ持ってなくて……」

「じゃあ交番にいきますか? 探していれば交番に来るかもしれませんし」

「いや、あの……大丈夫です。自分で探すので……」

ゆめはこのままだとまずいと思い、思わずぎゅっと力を込めると。勢いあまって、力を使い、姿を消した。「えっ!! 消えた!?」

様子を見守っていた人たちから絶叫にも似た声がする。慌てて姿を消したままその場を走り去ると、10メートルほどいったところで狭い横道に逃げ込んだ。

息が落ち着くとすーっと姿が戻る。とぼとぼと反対側に出ると、ちょうど朔と零が歩いているところに出くわした。

「姫さま!!」
「ゆめちゃん、探したよ!!」

そう駆け寄る二人にも、ゆめが青ざめているのがわかった。

「ごめんっ、すぐ帰ろう、姿が消えるとこ、見られちゃった……」

「ええっ!!」

「なっなんで!?」

ザワザワと人が集まってくる。とにかく
慌ててタクシーを置いていた駐車場に戻り、家へ向かった。

「やっば、もうSNSあがってる」

「えっ!?」

零のスマホを覗き込むと、ゆめがすーっと姿を消す様子が映像として上がっていた。イイネもどんどん増えている。

「朔さん、条件にこのこと書いてある?」

零が慌てて問いかける。

「条件にはないですが、大王がご決断なされば、帰ることになると思います」

顔がさらにざーっと青ざめる。いやだ、まだ帰りたくない。何もしていないのに帰還させられることに恐怖を覚えた。

「姫さま、頭下げてください。後ろたぶんついてきてます」

ルームミラーをのぞくと、バイクが一台ついてきている。