そういいながらも、ゆめは下を向いてしまった。

「……了解。ゆめが言うなら信じるよ。僕も手荒なことはしたくない。その西野さんと僕らがWin-Winの関係になれる、それが大長縄大会なんだ」

「……」

「この大会は、夏休みの子どもたちを楽しませるために、動画配信者の西野弥生がT病院とタックを組んでやりましたってことにしちゃうの。T病院は思春期心療内科に力入れてるから……ほらこれ見て」

SNSにのっていた広告を印刷したものをはじめは見せた。

「ほんと、思春期相談に気軽に応じますって書いてあるわね」

「これを逆手にとる。T病院も宣伝になるし、楽しい企画をやれば西野さんは文句が言えない。『何』で対決するかなんて言ってないしね」

「ほんとにうまくいくかな」「面白いじゃん」「体育祭みたいなもんだね」「盛り上がってきましたわ!!」

ワッとみんなが盛り上がる。

「よし、じゃあ役割分担するね。零と夏樹と朔さん、駄菓子屋にお菓子の詰め合わせ200セット買いに行ってきて!」

「なに? 200!? そんなに買うのかよ」
「はじめちゃーん、ひどすぎ」
「私もですか!?」

三人から罵声が飛ぶ。「金に糸目つけてる場合? 広場で思いっきりやるんだから人が集まるに決まってるでしょ? 200でも足らないくらいだよ。朔さんは車出して欲しいのでよろしくお願いします。隣駅のお菓子の問屋街いけばすぐあるから!! もう2時過ぎてるし、時間ないからすぐ行って!! 
4時半にはA駅公園に、集合で!! お金は……朔さんお願いできますか?」

「はい、お任せを」

三人はバタバタと出かけていった。零と夏樹の文句がブツブツ聞こえてたけど。

「かえでは去年、体育祭の長縄大会仕切ったよね? あの要領で、司会担当してほしいから下準備できる? 拡声器は祖父が町内会で使ってたのがあるから、あとで倉庫から出してくる。必要なものあったら言って」

「わかったわ」

「詩穂さんは、ゆめの今着てる服に着替えてください。着替えたら、かえでの手伝いをお願いします。僕はSNSの方やります。向田さんはゆめと留守番ね」

「えっ!? わたし留守番!? やだやだ、みんなと一緒に行く!!」

ゆめは思わず立ち上がって、訴えた。

「ダメだよ、もしものことがあったらどうするの? 近くに本人がいれば詩穂さんが替え玉だってバレちゃうかもしれないんだよ? 申し訳ないけど留守番してて」