「静かに! 朔さんにホームセンターで、長縄は買ってきてもらいました。参加できるのは高校生以下の子どもです。おみやげも用意します。このあと駄菓子屋に走ってもらいます。零と夏樹!! よろしくね」

「えーっ!! また?」
「はじめちゃーん、人使い荒いって」

夏樹と零が項垂れるのをよそに話を進める。

「肝心の犯人はどうするの?」

「刑事告発できない以上、やり返すことは難しいです。僕らも病院を混乱させたので、ヘタしたら逆手に取られる可能性もあります。一応、ゆめが監禁された動画は保存してあるので強くは出てこないとは思うけど」

「むこうは最初から生配信してくるでしょう? はじめくんどう出るつもり?」

「大変申し訳ないのですが、ここで詩穂さんの出番です」

「へっ!? 私?」

みんなの視線がバッと詩織に向く。

「はい。ゆめになりすまして、犯人のカメラに向かって『実はあれは加工でしたー! お騒がせしましたテヘペロ♡ 』でお願いします」

「え……てへぺろ? なんだそれ古っ!!」
「死後に近いな、詩穂ファイト!」
「テヘペロって……私が言うの?? まじか……言えるかな」

ざわつくなかで夏樹が声を上げる

「ところで犯人は特定できたのかよ」

「うん、ゆめが言ってた西野弥生って人はT病院の娘っぽい。動画配信で食べてく決意をしたってSNSに書いてた。その第一弾にゆめの消失騒動の真相を暴こうとしたみたいだね。最初だから張り切りすぎたのかも。さすがに誘拐はやりすぎだよね」

ほぉーと感嘆の息が漏れる。「はじめもそれなりにやるな」「いやいやハッタリかも」「弟よ、見違えたぞ」などワイワイと声が聞こえる。

「あ……あのね」

ゆめが口を開く。「西野さん、私が倒れたから病院に連れて行ってくれたのかもしれないの。あのまま倒れてたら大変なことになってたかもしれない。すごく悪い人ってわけでもないと思う。特に痛いこともされてないし……」