「そうだね、あのフェイク動画のタネ明かしの動画あげちゃえばいいかと思ってる」
みんなはうんうんとうなづいた。
「私、いいアプリ持ってるよ、友だちと遊ぶ用にダウンロードしたんだけど」
かえでがスマホのアプリを立ち上げて、夏樹を動画で撮影する。加工ボタンをタップすれば、キラキラと光の粒になって夏樹が消えた。
「すげー!!」
「やるねぇ、かえでちゃん」
「すごいわぁ」
「便利なものがあるのですね」
「このアプリ、いま人気なのよね。私も持ってるよ」
夏樹、零、向田、朔、詩穂が口々に言う。
「よし、じゃあこれを使っていくつも動画を撮って、SNSにあげよう」
「はじめ、対決はどうするんだ?」
夏樹が怪訝そうに訊く。
「もちろんやるよ。楽しい対決にするつもり」
はじめはニカっと笑って白い歯を見せた。ゆめと背格好が似ている詩穂と、カメラマンのかえで、用心棒に零の3人であちこちで動画を撮ってもらうよう頼んだ。東京の観光名所で消失する動画。これなら場外市場にいたことも辻褄を合わせられる。
夏樹はゆめと会った雪という小学生の女の子に協力してもらうため、公園にその子を探しに行ってもらった。
その間に、SNSを確認すると、犯人と思しき人からダイレクトメールが来ていた。
"病院を大混乱にしてくださって、ありがとうございます。17時のA駅公園、楽しみにしていますね。必ずいきますから"
思わずごくんと唾を飲こむ。そっちは面白い動画がとれればいいんだろ? なら面白い動画にしてやるよ。
ゆめは少しゆっくりすると、祖父の部屋へいった。
向田は少し遅くなったが、みんなが帰ったらお昼にしようとキッチンで忙しそうにする。
はじめがリビングで今後の作戦について考えているところへ朔が話があると声をかけてきた。
ふたりは二階のはじめの部屋で、ローテーブルを囲んで座った。
「はじめ様、この度はありがとうございます」
「いえ……」
「先ほど月とも連絡が取れました。大王様も満月様も、感謝しておられます。それで姫様の地球滞在期間ですが、いろいろありましたので、明日の月の入りをもって帰還せよとのことです。突然のことで申し訳ありません……」
「えええっ!!! あっ、明日帰るの!?」
はじめは思わず身を乗り出した。
「はい、大変お世話になりました」
朔はペコリと頭を下げる。
「そんな……」
はじめはガクンと項垂れた。あと一週間はあると思っていたのに。もうお別れだなんて。まだ、ゆめと楽しい想い出、全然作れていない。悲壮感が肩に重くのしかかる。「どうしても、明日ですか?」