風船をふたりで軽く挟んでみる。なかなか割れない。距離が近くて本当にドキドキしちゃう。

 思いきり抱き合えば割れるのかもしれないけれど、こんなわたしと抱き合うのとか嫌だよね? どうしよう、遠慮しちゃってぎゅって出来ない。

 そう思っていた時、翼は誰もこっちを見ていないことを確認して、爪で風船を押した。

 抱き合うことなく風船は大きな音を立てて割れた。

 ――そうだよね、こうしたら嫌なわたしと抱き合うことなく割れるもんね……。

 ちょっと寂しくなった。

 割れた風船に入っていた1枚のメモ紙がひらひらと床に落ち、それをわたしは拾った。

『今までで好きになった人の数は?』

 紙にはそう書いてある。

 好きな人、か。

 中学生の時に、この人かっこいいな!って思う人はいたけれど、それが恋かと言われると『?』ってなる。その人よりも、いつも翼のこと考えてた。

 元気かな?
 今何してるのかな?

とか。

 ここ数年、会えなかったけれど、翼はわたしのこと思い出してくれたりしたのかな?

 ううん、多分、ないな。
 むしろ思い出したくなかったんだろうな。

 あ、それよりも答えないと!

「わたしは『0』かな?」
「僕は『1』」

 あ、翼、好きな人、いたんだ。

 答えを聞いた瞬間、何故か胸が苦しくなった。

 もしかして、その子と付き合ってる?
 いや、付き合ってたらここにこないか。