「中津 遥かぁ。一緒に住んでた時は名字が別々だったけれど、結婚したらわたし達、同じになるんだね! なんか新鮮!」

「だね!」

「でもさ、なんでわたしたちの親、籍入れなかったんだろうね?」

「どうなんだろ。人の数だけ色んな考えや形があるから、きっと何か親たちにも考えがあったんだよ」
 
「そうだよね。それにしても、わたし達がカップルなこと、まだお母さんに話してないんだよね……。絶対に反対されそう」

「それは心配ないよ」

「どうして?」

「カップルになったこと、はるちゃんのお母さんに伝えた」

「えっ?」

 突然の予想外な言葉に戸惑う。

「入学式の日、はるちゃんとカップルになることが分かって、父さんに聞いて、はるちゃんのお母さんの電話番号は調べたんだ。でもなかなか電話は出来なくて。で、最近電話してやっと話せた。そしてね、『もしも卒業して遥と両思いでいられたら、結婚します。させてください。一生大切にします!』って言ったんだ」

「いつの間に? わたしまだ何も聞いてないよ……。お母さん、反対してこなかった? 翼が中学の時、不良になって人をいじめてたとか、沢山の女の子と同時に付き合って女の子を泣かしてたとか、お母さんから聞いてたし。お母さん、そのこと知ってたよ?」

「はっ? そんないじめとか、泣かすとかしてない。絶対に」

「そうなの? 翼、中学入ってすごく変わっちゃったんだなぁって、思ってた」

「ってか、はるちゃんのことしか考えてなかったから、他の人と付き合ったことないし。お母さんに反対はされたけど、何回もしつこく説得したら『もしも両思いでいられたらね』って」

 わたしの知らないところで、そんなことまでしてくれてたんだ。

 翌日、お母さんに電話で聞いてみた。

「どうして翼の嘘の悪い話、わたしにしたの?」って。そしたら「だって、親のわたし達が上手くいかなかったから。はるちゃん達はお互いに好きなんだなってこと、前から気がついてた。けどね、わたし達と同じ遺伝子を持つはるちゃん達も、同じように付き合って、同じように仲悪くなって、そしたらはるちゃんの心に傷がついちゃうのが嫌だから」だって。

 お母さんも、わたしのこと考えてくれてたんだって思った。
 でも、親と同じようになるとは限らないのにな。

 だって、わたし達はお母さんと翼のお父さんじゃない。
 遥と翼だから。