朝起きると翼はすでに起きていて、朝ご飯の準備をしていた。最近彼は料理に興味を持ち、たまにこうして作ってくれる。

「おはよう、翼」
「おはよう、はるちゃん」

 朝から彼の姿が見られるこの幸せ。
「おはよう」って言い合える幸せ。

 再び離れたくない。失いたくないよ――。

 彼の姿を見て、卒業して離れちゃうことをまた想像したら、急に涙が溢れてきた。

「どうした?」

 そう言うと翼は急いでコンロの火を止め、慌ててこっちに来た。

 そしてティッシュで涙を拭いてくれた。

「どうしたの? 大丈夫?」
「うん。急にごめん。」

 自分の気持ちを落ち着かせて、乱れた呼吸を整えると彼に言った。

「まだ先の話なんだけど、ここで1位とれなくて、卒業して。そしたら翼と離れることになって……。そんなこと考えていたら寂しくなってね……」

 また泣きそうになる。
 でも、泣いたら上手く話せなくなるから、ぐっと涙をこらえた。

 遠足デートの時、告白してくれた。でもわたしはうなずくだけだった。あの時は、自分の翼への気持ちがよく分からなくて。

 でも、今は分かる。

 わたしも伝えたら、何か未来が変わるかもしれない。

 きちんと伝えなきゃ。
 伝えようとした時、翼が言った。

「僕も、また離れるのなんて嫌だよ! 卒業しても一緒にいたい。この学園で1位になれなくても、はるちゃんと結婚したい」

 まさか、そんなこと言ってくれるなんて……。

「わたしもね、翼が好き」

 自然と言葉が出てきた。
 あの時の返事――。