今日は、わたし、沢木遥(さわきはるか)がこれから通う、私立七海学園高校の第1回入学式。 

 体育館に全校生徒が集まり、式が行われている。舞台の上にはとても明るくて派手な雰囲気の夫婦がいる。

「入学おめでとう諸君! 運命の相手との出逢いは果たしたかな? 私達がこの学園の創立者であり学園長、七海夫婦だ!」

 生徒達がざわめいている。
 なぜなら、テレビやネットでよく目にする、有名なふたりが目の前にいるから。

「知っての通り私達は、PC、スマホ、アプリ等世界一のシェア数を誇る大IT企業〝セブンオーシャン〟の社長でもある。そんな私達の目的は1つ! この中の1組に、世界一の結婚をしてもらうためだ! そしてもうじき引退する私達の後を継いで社長になってもらう!」 

 結婚、社長……。私の人生にとっては未知の世界でとても大きなこと。

「今世界中で注目されている我が社が開発したマッチングシステム〝デステニー〟の実験も兼ねている。生徒は君達1期生のみ男女240名! デステニーによって組まれた120組の中から3年間かけ1組! 金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)を選ばせてもらう。選ぶのは我が社の社員達」

 3年間過ごして選ばれるのは、たった1組だけ。
 つまり、120分の1の確率で選ばれる。

 周りを見渡すと、とても目がキラキラ輝いていて、自信がありそうな生徒がいっぱいいた。

 選ばれるの、難しそうだなぁ。

「決められたペアのチェンジやリタイアももちろん可能だが、私達はより多く真実のカップルがデステニーによって生まれることを願っているよ! 学生の頃、運命の恋をして結婚した私達のようにね!」

 運命の恋ってなんだか素敵。
 学園長達はとても仲が良さそうで、幸せそう!
 
「選ばれた2人は卒業と同時に、入籍。そして、この社長の座についてもらう。さぁ若者達よ! 大いに青春してくれ!」

 3年かけて金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)になって、会社、セブンオーシャンの社長になる、か……。

 そう、わたしは『世界一幸せな結婚』をするためにこの学園に来た。でも自分の意思ではなくて、お母さんがここにしなさい!って。理由はわたしに合う人を見つけられて、社長になり、幸せな結婚、幸せな未来を手に入れられるからって。

 特に行きたい高校とか決めてなかったから言われた通りにここを選んだら合格した。

 すごくドキドキする。
 どんな毎日になるんだろうって。

 これからのこと、何も予想出来ないよ。  
 お付き合いもしたことがないのに、いきなり結婚の話。
 
 そもそも世界一幸せな結婚って、何?