最後は観覧車に乗る。

 キーホルダー、乗ってる時に渡そうかな?

 観覧車の中はふたりきりで手を離しても誰にも見られないからバレないのに。乗ってもずっと手を繋いでいた。その手を離したくなかっけれど離して、さっき買ったキーホルダーを出した。

「これ、沢木さんにあげる」
「えっ? いいの? 透明な星の中にカラフルなキラキラが沢山浮いてる! デザインめちゃくちゃ可愛い!」

 遥の目がキーホルダーの中身みたいにキラキラした。気に入ってくれたみたいで安心した。

「でも、これふたつ買って、お揃いなんだ。僕なんかとお揃い……嫌いなヤツとお揃いだなんて、嫌だよな?」

 そう言った瞬間、遥の動きが止まった。

「わたし、中津くんのこと嫌いじゃないよ!」
「えっ?」

 突然の言葉に、僕の心がギュッとなった。

「確かに離れて合わなかった期間は、あんまりよくない中津くんの噂を聞いちゃって嫌だなって思っちゃったけど。実際一緒に過ごしていたら、噂とは全然違って、小さい頃みたいにさりげなく優しくて……。嫌いじゃない! むしろわたしが嫌われてて、寂しくて……」

 遥は泣きそうになっている。

「いや、僕は嫌いじゃないし。むしろ好……」

 勢いで告白しそうになった。
 
 嫌われていると思っていたけれど、嫌われてなくて。
 むしろ遥は、僕に嫌われていると思っていた。

「嫌いじゃないよ! 嫌いじゃない。本当に嫌いじゃないから」

 こんな言葉を連呼するなら『好き』ってたった二文字伝えればいいのに、自分。

「良かった、嫌われてなくて」

 頂上まで来た観覧車は、広い青空、遊園地内、そして遠くの街並みまで綺麗に見せてくれていた。それを背景にして遥は、笑顔を見せながら涙ぐんでいた。

 その姿が綺麗で、可愛くて、愛しくて――。

 僕は、彼女の目をみつめながら、自然と言葉をもらしていた。

「好き。ずっと好きだった」