周りのカップルはどんどん風船を割っていく。

 僕達は風船を結局、そのひとつしか割れなくて、1位にはなれなかった。

「はぁ、残念。一緒に食堂のカレー食べたかったな……」

 遥は悲しそうな顔をして呟いていた。
 多分僕に言っているわけではなくて、ひとりごとっぽいけれど。

「一緒に」って、多分僕と一緒にってことだよね?

「食堂のカレー、食べてみたい……」

 勇気を出して遥に言った。

「えっ?」

 目を見開いた遥がこっちを見た。

「一緒に、カレーを食べに行きたい、です」

 もう一度思いを伝えた。
 そう言った瞬間、遥が嬉しそうな顔をした。

「うん、行こう!」

 1位は取れなかったけれど、イベントの後、一緒に食堂に行った。

 混んでいるところでご飯を食べるのが苦手だったけど、そんなのどうでもよかった。

 だって、僕は遥のことしか見えなくて。
 一緒に食べてくれている遥が微笑んでくれていたから。

 黄金カレーの味は美味しかったけれど、遥と食べるご飯だから、すごく、すごく美味しく感じた。