「すみません、お願いします」
トントントンと階段の音がして真広さんの部屋のドアが開いた。
「切るの?」
「ショートカットはキープが難しくなるから」
「切るなよ」
え?
「髪……伸ばして欲しい」
真広は大冴を見た。
「どうする?菜摘ちゃん」
「どうして?」
「……わかってるくせに」
「わからないよ、ぐすっ」
あ〜もうダメだ……泣いちゃう
「ちょっと、大冴、部屋に行ってて」
真広さんが追い出した。
「菜摘ちゃん、今回は前髪だけにする?」
「わからない……ぐすっ、大冴くんが何故ああいう事を言うのか」
「髪を伸ばす意味は菜摘ちゃんはなんとなくわかってるんでしょ?」
「……でもはっきり聞いたわけではなくて」
「大冴は瞬弥みたいに素直に口に出せない子だから……私もだからわかるんだよね、素直になれないんだー」
「真広さんも?」
「うん、弟が出来るって聞いて大冴と2人で少し寂しかった
子供の時に素直に家にいてって言えばよかったのに2人で我慢してね、弟の事なんて可愛がれるかなって2人で話した……
まあ、産まれたらやっぱり可愛いんだけどね(笑)」
「……前髪だけお願いします」
しばらく迷って菜摘はサイドを切らない選択をした。