大冴の顔をじっと見る。
「そんなに見るな」
顔を横にそむける
「私の事嫌い?」
「いや」
「でも好きでもないんだよね」
「……」
大冴くんからは何も言葉はなかった。
菜摘は少しさがりまた大冴の胸に頭をつけた。
「もう少しだけギュッてして……お願い」
大冴は両手でギュッと菜摘を抱きしめた。
俺……何やってんだろ
軽く鼻水をすする音だけが部屋に響く
無言のまま、力も弱めず抱きしめてくれている
菜摘の鼻水が止まった。
「もう、いいよ」
下から菜摘の小さな声が聞こえた。
大冴はゆっくりと手を離した。
菜摘はぺちゃんと両膝を曲げて座り大冴も体を起こした。
大冴の手が伸びてきて頭をくしゃくしゃとしてくれたと思うとまた耳にかけてくれる
「……体育委員の委員長」
「ん」
「大橋の兄貴だから」
「え?」
「お前気に入られたかもしれないから気をつけろよ」
「…わかった」
大冴は立ち上がってカバンを持った。
色っぽい格好と眼差しで俺をじっと見る
「そんなに見るな、じゃあ、明日」
菜摘の目を手で塞いだ。
そして頭をポンポンとして部屋を出た。
リビングにいた菜穂に帰ると告げ和田家を後にした。