菜穂は走って帰ってきて階段をバタバタと上がってきた。
「うるさいよ、菜穂」
バタンとドアが開いた
ハァハァ、ハァハァ
「どしたの?」
「ど、どうしよう」
まだ肩で息をしている。
「な、菜摘の事……知ってる人……に」
「間違えられたの?」
うんうんと頷く。
「違うって言えばよかったのに」
「でも、和田って言われたからそうですって言っちゃって、そしたら例のかっこいい人が来てびっくりして逃げて来ちゃった」
普段から運動をしない菜穂はまだまだ息を切らしている。
「もう〜、ちゃんと話せばわかってくれるでしょ」
「無理……、話せない……、恥ずかしい……」
思い出したのか真っ赤になってしゃがんでしまった。
「じゃあ、コンビニに行くのやめれば?」
冷静に菜摘に言われる。
「嫌!せっかく顔を覚えてくれて少し話せるようになったのに」
可愛いなぁ、菜穂は……
妹の菜穂は女子校に通っていて男子の免疫力が皆無だ。
でもそのコンビニで会う人に一目惚れをどうやらしたみたいで、会えると嬉しそうに話してくれていた。