「気をつけて帰ってね。また明日」

絃羽先輩は、無表情で少し近寄り難い雰囲気だけど話してみたら普通に優しい。

近寄り難いのはあの四人がいるっていうのもあるけど…。

絃羽先輩の双子の弟の湊先輩。そして中学生からの仲、稀翔、一織、樹先輩。この四人が絃羽先輩のことを囲っていて話しかけづらい。

樹先輩も笑顔で沢山話しかけてくれるけど笑顔の裏が何かありそうな感じでちょっと怖い…って思ってしまう。

でも四人に怖気付いてたら絃羽先輩に近づけない。

絃羽先輩の様子的に俺のことは覚えてないみたいだ。

俺が先輩のことを好きになったきっかけは廊下で出会った時だ。

授業で居眠りをしてた罰としてプリントとノートを運んでいる。資料室がどこか分からなくて迷っていたらプリントを落としてしまった。

ノートを置くと全部崩れてしまいそうで困っていた時に絃羽先輩がすぐに拾ってくれた。

「はい。さっきからいるけど資料室の場所わからないの?」

俺が迷っているのを見ていたようだ。

「あ、ありがとうございます。わからないです…」

そう言うと絃羽先輩は半分ノートを持って案内してくれた。

たったそれだけの話だが俺は人生で初めての一目惚れをした。

この人が有名になっている先輩ということもすぐに分かった。

美少女…ということがまさに当てはまる人だった。

肌が雪のように白くて声も透き通っている。さらっさらのストレートヘア、目がぱっちりしていてすごく大きい。女の子の理想を詰め込んだような人だった。

俺は恋はしたこともなく恋愛とは無縁だった。先輩を見た瞬間胸の高鳴りを感じた。

これが一目惚れか…となぜかすぐに分かった。

資料室まで案内してもらったがどんな話をしたのかも記憶がない。ただ変なことを言ってないかが心配だ。