「カルテにナッツアレルギーと書いてありました」

一花がそう言い、桜士にアドレナリンの入った注射器を渡すとエピペンの用意をし始める。桜士はアドレナリンを注射した後、カルテを見た。

「……五歳の時にアーモンド入りのチョコレートを食べてアナフィラキシーショックを起こしたきり、救急搬送はされていませんね」

自分のアレルギーのこと、アナフィラキシーショックを起こした時のリスクなどは、庄司からしっかりと説明を受けているはずだ。何故、アナフィラキシーショックを起こしてしまったのだろうか……。

ショック状態が薬によって落ち着いた姫香を見ながら、桜士は考えた。



姫香の状態がかなり回復してから、桜士と一花は先に彼女に話を聞くことにした。姫香は体を起こし、水を一口飲んでから話し始める。

「今日はみんなバイトのない日だったから、放課後に新しくできたカフェに行こうって話になったんです。おいしくておしゃれなパンケーキがあるので有名で、インスタで見かけて行ってみたかったんですよ」