公安警察・九条桜士ならばそのまま放っておいただろう。だが今は医師の本田凌だ。優しい彼ならどうするか、その答えはもうわかっている。

「黒田チーフ、今日はもう先に休憩に行ってください。空元気なの丸わかりです」

桜士がそう声をかけると、一花も「それがいいですよ!」と頷く。ヨハンや看護師も頷いていた。

「食堂の新メニューの月見うどん、めちゃくちゃおいしいって色んな先生が言ってますよ。食べて感想聞かせてください!」

一花がそう言い、「えっ、でも……」と言っている庄司の背中を押す。その時、救急隊から電話がかかってきた。庄司がその電話を取る。

「……はい、はい、えっ!?それはうちの娘です!!」

「えっ!?」

救急科に緊張が走った。



数分後、ストレッチャーに乗せられた女性が救急科に入ってくる。可愛らしいピンクのリボンのブレザーの制服を着て、長めの髪はローポニーテールにされ、カチューシャをつけられている。だが、彼女の顔は真っ赤に腫れ上がり、ゼエゼエと苦しそうな呼吸をしていた。