犯罪のデパートのような組織なのだが、ここ二年で大規模なテロ行為にまで及ぶようになった。神経ガスを病院やビルなどに撒き散らしたり、爆弾を仕掛けたりと、世界中でテロ行為を行っている危険な組織だ。しかも、その爆弾などには蝶のマークを描いているというふざけぶりである。

「榎本総合病院に手は絶対に出させない!」

好きになった人が働いている場所を奪うわけにはいかない。桜士は拳を強く握り締めた。



朝ご飯をしっかりと食べ、身支度を終え、桜士が病院の救急科に行くと、救急科のチーフである黒田庄司(くろだしょうじ)がいつもより暗い顔をしていた。時折り、「ハァ……」と重いため息を吐いている。

「黒田チーフ、どうしたんですか?」

桜士がそばにいた一花に訊ねると、一花は苦笑しながら言う。

「娘さんと喧嘩をしちゃったみたいで……」

「クソッ!!どうして、日本の父親は娘から嫌われなくちゃならないんだ!?十年くらい前までは「パパ、パパ、パパ」って可愛かったのに!!」

庄司は机を叩く。ドンッと鈍い音が響いた後、「イッテ〜……」と彼は手を押さえた。強く机に叩き付けたところが赤くなっている。