その4
夏美



この後、一区切りついたということで、南部さんはトイレで中座してね

その間、色々頭を整理してたんだけど…

そしたら、ふと思いついたの

”よし、あのこと、南部さんには聞いておこう!”

私はそう胸の中で呟いたわ


...


はは…、トイレから戻った南部さんの顔をニコニコしながら見てたら、察してくれたようだ

「なんか、今日のうちにまだ”この手”の話があるみたいだな…(苦笑)」

「はい…。この際、私からも南部さんの立場を踏まえて、どうしてもひとつお聞きしてみたいことがあるんです。いいですか?」

「おお、今日のうちに全部済ませとこうや。今のうちに何でも聞いてくれ(笑)」

私はちょっと一呼吸おいて、表情もちょっと整えてたわ(苦笑)


...



「実は、これも以後は絶対話せない範疇のことですが、実は南玉内の急進派からは、南玉連合の影響を受けて発足した千葉や横浜などの後続女性集団を一堂に集め、この際、更に広く女性集団の誕生を促進する拡大路線を確認し合おうと…。具体的な会合を呼びかける決議を求めてきてるんです」

「他県か…。まあ、既に南玉に刺激されて、いくつかは関東で発足を見たと聞いてはいたが…」

「はい。あのう…、私の考えを先に言っちゃうと、確かに他県の後続グループと意思疎通の場を設けることは有意義だと思います。ただ、南玉の急進グループが狂犬娘の合田荒子のイケイケ路線を大きく掲げてる今、他県を安易に煽るような誘導はちょっと危険のような気がします。要は今は時機でないと」

「…」

南部さんは真剣な面持ちで私の意見に耳を傾けてくれてたわ…

...


「…それで、私は執行部を代表し、土佐原先輩を通して紅丸さんのご意見を伺うつもりです。そこで、紅丸さんと長くパートナーシップを採られてきた南部さんは、紅丸さんがどんな見解を示されると思いますか?」

「うーん…、そうだな、あの人は時期早尚と見るんじゃないかな。いや、今はむしろ避けるべきだ。危険だくらいのニュアンスで返って来るかもな。ああ、これはあくまで個人的な推測だから、承知してくれ」

「はい。でも大変、参考になりました」

彼の推測は、私のそれとほぼ一緒だったわ

なんか、安心したと同時に少し自分に自信ついちゃったかな(笑)

...


「それからさ、あの人は内政干渉になるようなことは避けるからさ。…発信されるシグナルは解釈がなかなか難しいんだよね。読み違えることは危険だから、キミも承知してると思うが、慎重にね」

「ええ…、私のこと、気に掛けてくれてありがとうございます。土佐原先輩から受け取ったメッセージ、しっかり読み解きますので。その上で判断を誤らず、然るべき方向へ南玉を誘導します」

「ああ、頑張れ。応援してるぞ。だが、お互いが今のポストを退くまでは、”これっきり”だ」

「はい。お互い”それ系”の話には貝の口になリましょう」

「アハハハ…、いい言い回しだなあ…」

かくして、この日交わした”誓い”のもと、二人のルールに基づいて、私たちは交際することになったわ!

南部さん、よろしくね…