「妃殿下」

 そのとき、侍女長とさきほどの侍女が駆けて来た。

「妃殿下、先程は……」
「いいのよいいのよ。それよりも、気にしないでね。彼女、わたしへのあてつけであんなことをしたのだから。謝らないといけないのは、わたしの方。先程のことは忘れてちょうだい。いいわね?」

 侍女は小さくなっている。

 足をひっかけられれば、だれだって転んでしまう。そのことを気にして辞めてもらいたくはない。