「きっとしあわせなんでしょうね。それだけ美しくて聡明だったら、殿方にもチヤホヤされて。小説やお話に出てくるプリンセスやレディと同じで、いつもキラキラ輝いてしあわせの絶頂にいるのですもの。それに比べて、底辺のしあわせなんてほんとうにささやかなものなのですよ。カビのはえていないパンをかじることとか、今日のパンは歯が折れそうなほど硬くなかったとか。凍てつく寒さにボロボロの毛布でかろうじて耐えられたとか。使用人がこっそり裁縫道具を貸してくれて、破けた服を繕えるたとか」