「チカ」

 いつものように絵の前でボーッとしていると、ラインハルトが奥から出て来た。彼は渋い美貌にやさしい笑みを浮かべ、わたしの視線を追った。

「ああ、この池の絵か」
「はい。ここにやって来て玄関から入った瞬間、この絵に惹かれたのです。心が震えるというのでしょうか。感動以上のものを感じたのです。毎夜、眠る前にこうして眺めています。窓から射し込む月光の中、よりいっそう幻想的で魅惑的に感じるのです」
「それは驚いた。ありがとう。息子たちは、バカにするんだがね。ほんの手慰みだよ」