近くのバス停にバスが停まっているのを見つけて、私は急いでバスに乗った。
行き先がどこかなんて全く見ずに。

朝の出勤、通学時間なのに全く人が乗っていない。
でも私はそんなことなんか気にしていられない。

静かなバスの中
私の上がった息だけが響く。
「ははっ……」
今さっきの出来事で私はもっと自分のことが嫌いになった。

その日は学校を休んだ。
学校から親に連絡はされているだろう。
お母さんは私に電話しただろう。
でも、私のポケットの中にあるスマホは振動一つすらない。
なぜなら電源をきっているから。
今日一日だけで良いから何も考えずに居たかったの。

しばらく自分の知らない街を散歩した。
心が落ち着いた。

「ただいま。」
お母さんはまだ帰ってきてないらしい。
私は手も洗わずに自分の部屋へ上がる。

机の上にあるカッターナイフが目に入る。
私は無心にそれを手にして手首に当てた。
チクッとしただけで全く痛く無かった。
きっと春翔と結衣はこんな痛みよりもっと痛かっただろう。
これは罪滅ぼしか何かだろう。

バタバタ
階段を登ってくる音が聞こえる。
「葵⁈」
お母さんは私と、血が流れている私の手を交互に見て目を見開いていた。
「何やってるの!やめなさい!」
そう言ってお母さんは私の手からカッターナイフを取り上げた。
「ほら、手当てをするからここ座りなさい。」
そう言ってお母さんは私を椅子に誘導した。