※※※

──二ヶ月後。


「里奈ー、この段ボール、寝室に持っていくなー?」

「うん、運んだら中開けて、あなたのスーツをクローゼットにかけていってもらえない?」

「了解」

悠作の声に振り返りながら、私は『食器類』と記載された段ボール箱を開封していく。

「ママー、僕の新しいお部屋って……窓際のお部屋で合ってる?」

「ええ、窓際よ」

悠聖がガラッと窓を開けた音がした。

「わぁ、ベランダいいね。あ!お隣さんのベランダも丸見えだ」

私はやれやれとため息をつくと悠聖の部屋へ向かう。

「悠聖っ、お隣さんのベランダなんて覗いちゃだめよ」

「わっ、びっくりした。ママ、驚かさないでよー」

悠聖が口を尖らせながら目の前の段ボールを指差した。

「これ片付けていったらいいの?」

「えぇ。中に教科書とお洋服の入ってるから開けて出してくれる?」 

「はぁい」

「じゃあ、ママは台所で食器片付けてるからね」

私は荷解きを始めた悠聖小さな背中を見ながら、心の底からほっとしていた。