「結婚って誰とですか? 私、恋人はいないんですけど」
「相手は俺が決めるから大丈夫だ。奏和は俺を信じればいい。奏和が結婚すれば、支援もするし和樹も大学の学費を払おう」
母の話を聞く限り、私が結婚しないとこれからの生活は成り立たないということだ。だけど、私が結婚すれば実家も弟も助かる。和樹もこれから先の進路も困らない。
幸い、私には相手はいない。誠さんに会えなくなるのは寂しいけれど、家族のためだ。
「分かりました、お祖父ちゃん。私、お祖父ちゃんが選んだ相手と、結婚する。だから、支援をお願いします」
「もちろんだ、約束する」
「ありがとうございます」
私がお辞儀をすると「待ってください」と低い声が後ろから聞こえた。
「……姉ちゃんはそれで幸せになれるのか? 俺は反対だ。姉ちゃんには幸せになってほしい」
「和樹、ありがとう。でも、私は結婚するよ。和樹とお母さんの居場所を無くしたくないの。手芸店はお父さんとの思い出がいっぱい詰まってるんだもの。それに幸せになれないなんて誰が決めたの?」
「そうだな、俺も無くしたくない。……お祖父ちゃん、よろしくお願いします」
和樹もお辞儀したことで私は結婚することが決まった。
それから数日後、顔合わせの日程が決まったとお祖父ちゃんから連絡があった。