『――デートしてください!』


 そんなお願いをした翌日、私は誠さんと出かけられることになった。優しい彼は、何も聞かず頷いてくれたから行けることになったのだけど……


「姉ちゃん、今日はどっか行くの?」

「……っ、え? どうして?」

「今日、めちゃくちゃお洒落してるから」


 確かに和樹に言われたように今日はいつも以上に着飾っているし、メイクも頑張った。


「変、かな?」

「可愛いよ、……誰かと会うの?」

「うん。結婚の報告も兼ねて、出かけるの。結婚しちゃったらもう、会えないから」


 言葉にするとグサグサくるのがわかるけど、でも自分で決めたことだ。それに誠さんと恋人同士になれる確率はとても低い。それに、老舗の生地問屋の若旦那と小さな手芸店の娘なんて釣り合わない。


「そっか、楽しんで来なよ。母さんとじいちゃんにはなんとか誤魔化しとくから」

「ありがとう、和樹。……じゃあ、言ってくるね」


 私は和樹に見送られながら家を出た。確か今日はおじいちゃんが顔合わせのことでやってくる予定だから、まぁ、それまでには帰宅予定だけど。