「……できた」


 糸始末をして糸切り鋏を入れるとパチっと糸が切れた。私は、刺繍出来たものを眺めて図案通り出来たことに安心する。

 今回はハンガリー風の花刺繍を刺してみて私好みに出来上がったから笑みが溢れる。
 ふふっと思わず声を出して笑いながら、型紙を当てて裁断しそれをミシンや手縫いで縫い合わせると完成したものを写真撮影する場所に持っていった。

 スマホで完成品を撮るとそれにハッシュタグをつけて【ハンガリー風パスケース】【ハンカチ】とSNSに投稿する。

 投稿した後、オーダーしていただいた完成品を袋詰めにして名刺とメッセージを添えて封筒に詰めて封をすると手提げかばんに入れて外に出た。
 

 マンションの部屋を出て、最寄り駅まで歩いて十五分。電車を使って一駅だけ乗り、駅から五分ほどのところで郵便局でさっき袋詰めしたものを出して今日の目的地に向かう。

 私は、大きなビルの中に入ると【宮川生地】という文字を見て二階を押した。いつもの様に受付を済ませると、中から「奏和ちゃん」という声と共に男性がこちらに歩いてくるのがわかる。